【サメ映画】『海底47m』レビュー

『海底47m』

原題:In the deep/47 meters down
監督:ヨハネス・ロバーツ
出演:クレア・ホルト, マンディ・ムーア, マシュー・モーディーン
備考:監督は『ストレージ24』の人


47d1
⒞47 DOWN LTD 2016

 まともなサメ映画をまともな劇場で観る機会なんて、一生にそう何度もあるものじゃないと思うから、今の内に『海底47m』は観ておくといいよ(2017/08/13現在)。




 あらすじ

 メキシコで休暇を過ごすリサとケイト姉妹は現地の男友達から、海に沈めた檻の中から野生のサメを鑑賞する“シャークケージダイビング”に誘われる。
 臆病なリサは尻込みするが好奇心旺盛なケイトに強引に押し切られ、挑戦することに。

 姉妹を乗せた檻はゆっくりと水深5mの海へと降りていく。
 初めて間近で見るサメの迫力に大興奮の二人だったが、悲劇は突然訪れる。

 ワイヤーが切れ、檻が水深47mの海底まで落下してしまう。
 そこには、無線も届かない海の底。助けを呼ぶ声は届かない。
 急浮上すれば潜水病で意識を失ってしまい、海中に留まればサメの餌食になること必至。

 ボンベに残された酸素はあと僅か。
 全てが極限状態の海底での脱出劇に、生還という結末はあるのだろうか!?
(パンフレットより引用)




 というわけで『海底47m』だが、本作は非常に気味が悪く、そして意地が悪く、更には観ている方まで息が詰まってくる程に「海底がヤバい」作品である。



 本作では、二人を狙って檻の周囲を泳ぐ殺人ザメという“直接的なサメの恐怖”と、


観る前に想像していたより凄まじい速度でガンガン減っていく酸素
広過ぎて、かつ深過ぎるのに、一種の閉塞感が漂っている海底の暗黒
殺人サメと戦うことはおろか、強引に逃げ出すことさえ叶わない極限状態
 実質空手に近い状態で、急浮上が不可能な水深まで落下してしまったため、一か八か勝負に出ることさえ難しい。
重ねて緊迫感を煽ってくる嫌な音楽と、主人公の呼吸音



 という“実体を伴わない深海の恐怖”が両立して描かれている。



 そのような状況下の中で、主人公の姉妹二人は、何とか生き残るために必死で策を巡らせるわけだが――



 この海底47m、主人公が苦心して考え出した“打開策”や、普段のサメ映画ならそれで問題が解決する“突破口”“生還への淡い希望”というものを、本当に無慈悲に、それも徹底的に潰していくのである。



 それも“助かりそうな場面”では、「本当にこれで助かりそう」と本気で思わせてくるから性質が悪い。
 「まあ、例え作戦に失敗したところで、流石にもう状況が悪化することはないだろう」などと呑気に画面に眺めていると、本作はその予想の斜め上を行く方法で、“渾身の突発的絶望ポイント倍増キャンペーン”を客に投げ付けてくる。



 公開直後ということもあって、その詳細はまだ語れないが、本作は“一瞬たりとも気を抜けない、残酷なスリルに満ち溢れた作品”という部分は特に推しておきたい。









 ただし、本作を観る上でいくつか気を付けておきたい点がある。



 一つは、本作が『ソリッド・シチュエーション・スリラー』であるということだ。



 簡単に言えば、“特定の閉鎖的な環境下で、極限状態に置かれた人間を描いた物語”を指す言葉だが、この手の作品はその題材の都合上、“物語の舞台が一拠点から殆ど動かない”
 そして、“通常の作品と比べると、不気味な雰囲気重視のスローテンポな作品が多い”

 故に、この手の作品は“観客自ら劇中の登場人物に感情移入して、共に極限状態を体験する”必要があるので、意外と人を選ぶジャンルでもある。

 それでは、この海底47mはどうだろうか。



 本作の場合は、


酸素というタイムリミットを設定することで、何も起こらない場面でも緊張感を保つ工夫
主人公達にいくつか希望を与えて行動を強いた上で、そこから突き放してくる展開の緩急
そして、絵的な迫力が単純に恐ろしい殺人ザメ



 という一種の娯楽的な配慮が加えられているので、私は一切退屈しなかった。
 少なくとも、下らない会話がダラダラ続く類の作品とは絶対に違う。



 とはいえ、それでも観る側との相性というものがある。
 特に、“何か巨大な殺人サメが、次々に人間を殺していく類の作品を望んでいる”方や、“作品と一定の距離を置いて、俯瞰視点から物語を楽しんでいきたい方”には、もしかすると合わないかもしれないことを、念のために書き添えておこう。





 もう一つは、“『ロスト・バケーション』と似た内容を求めて本作を観るのは避けた方が良い”ということだ。



 昨年の同時期に公開した『ロスト・バケーション』と本作には、“サメが登場するソリッド・シチュエーション・スリラー”という点でいくつか共通する部分が存在する。
 そのため、ロスト・バケーションを既に観ている方は、もしかすると本作の鑑賞後に「ロスト・バケーションと比べて良かった/悪かった」という感想を抱くことがあるかもしれない。

 だが、本作とロスト・バケーションでは根本的なコンセプトが違う。



 例えば、ロスト・バケーションは“サメの恐怖”を描くと同時に、


繊細な少女の成長と、辛い過去との決別という別の主題
序盤の牧歌的な映像美やPinP演出を、後半の展開の伏線に用いる技巧
ジョーズのオマージュ



 などの様々な要素を内包した上で、見事に纏め切った、“一本の物語として非常に完成度の高い作品”である。



 
 一方で、海底47mは、



“サメ及び深海の恐怖に特化した純正スリラー”



 であって、“客に絶望を与えることに振り切った作品”である。
 臆病な姉の成長を描いた作品とも取れないわけではないが、そのように観た場合、本作の例の結末は……ウフフ。

 勿論本作は本作で、脚本・構成や伏線に趣向が凝らされている傑作ではあるが、“ロスト・バケーションと同じ系統の内容を期待して”観た場合、十中八九「何か違う」と思われるだろう。
 特に“物語性を重視しているか否か”という点において、海底47mとロスト・バケーションは“違う作品”なのである。

 そして、「ロスト・バケーションみたいな作品かと思っていたけれども違ったなあ……」という事態を避けるためにも、本作の鑑賞前にはロスト・バケーションのイメージを頭から消しておいた方が良いかもしれない。





 などと語ってきたが、要は「海底47mは良い作品」ということである。
 もし多少なりとも本作に興味が湧いたなら、“騙されたと思って”一度観てみると良いだろう。



 「騙された! でも滅茶苦茶面白い!」と思うこと請け合いだ。

関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

No title

うちの近所の映画館は9月公開とか言ってるんで、
気が向いたら行ってみようと思います。

ラストのオチは言ってはなんだが直前でちゃんと前振りされているので察することは出来る
ただわかっていても主人公たちの必死の行動に思わず応援せずにはいられず気がつけばそんなことは頭の中から抜け落ちてしまう
そしてやったこれで助かった・・・!と思わせてからのあのオチ
ほんとこの映画作った奴は性格悪いわ(最大限の誉め言葉)

No title

なんで2年連続で良作サメ映画が全国公開されてるんですか?天変地異かシャークネードの前兆ですか?

No title

オープンウォーター以来、ソリッドシチュエーション+サメっていう映画が増えてきた気がします
しかもどれもハズレなしに怖くて面白い
サメとソリッドシチュエーションはフィンとチェンソーくらい相性がいいのかもしれませんね

No title

先月頃に見に行って来ると言った者ですが
時間作って行ってきました。
あっと言う間の90分と言った感じでした。
「サメ映画」と言うよりは「サメの出る映画」と言うべきなんでしょうね。