【サメ映画】『ビーチ・シャーク』レビュー

『ビーチ・シャーク』

原題:SAND SHARKS
監督: マーク・アトキンス
出演: コリン・ネメック, ヴァネッサ・リー・エヴィガン, ブルック・ホーガン
備考:本作の製作の一人にスコット・ホイーラー/彼は度々マーク・アトキンスと組んで仕事を行っている


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⒞Remember Dreaming, LLC

 随分と増えてきたトンデモ路線のサメ映画の中でも、特に有名な作品の内に数えられる一本が、本作・『ビーチ・シャーク』である。

 とはいえ、新作公開や国内放送の機会に恵まれているシャークネードシリーズやメガ・シャークシリーズなどと比べると、「そういえばビーチ・シャークは知らない/少し古いからまだ観たことがない」という方も多いかもしれない。



 だが『ビーチ・シャーク』は今時のサメ映画にも負けない、現役で通用する作品だと私は信じている。

 あっ、でも、『ロスト・バケーション』『海底47m』には流石に……最初から規格が違うので除外して、“トンデモ路線のサメ映画の中では”現役で通用する作品だと私は信じている。



 そこで今回は初心に戻って、この“サメが陸を泳ぐサメ映画”・ビーチ・シャークをレビューしていこう。





 ちなみに、本作に登場するサメは『英名:Sand_shark/和名:ビーチ・シャーク』という架空のサメだが、他に『英名:Sand_tiger_shark/和名:シロワニ』というサメが実在する。

 紛らわしいので気を付けよう。




 あらすじ

 地震によってできた海底の亀裂。
 そこから、太古の捕食者が姿を現した…。

 静かな島、ホワイトサンドに、町長の不良息子・ジミーが戻ってきた。
 町を活気づけるため、そしてギャングからの自分の借金返済のため、彼はバカンス中の大学生たちを狙った大規模なビーチ・パーティー“サンドマン・フェスティバル”の開催を計画。
 それを、保安官のジョンと、彼の妹であり同じく保安官であり、そしてジミーの元カノであるブレンダは見つめる。

 そんな中、ビーチではサメに襲われたと思われる若者の死体が発見される。
 海から離れた位置にあった死体に、通常のサメとは何かが違う恐怖が島を覆う。

 ビーチの閉鎖を主張する保安官と、フェス開催を強行しようとするジミーは対立。
 またひとり、、またひとりと続出する犠牲者。

 そしてついに、ジミーたちの眼前に、砂の中から人間を食らうために飛び出す巨大な“ビーチ・シャーク”が姿を現した!!(パッケージ裏のSTORYより引用)






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⒞Remember Dreaming, LLC

↑ビーチ・シャークの解説。
馬鹿みたいな設定でも問答無用で先に言い切るのが肝心だ。




 このビーチ・シャークだが、基礎プロットは概ね“ジョーズのパロディ”である。
 とはいえ、それは“ジョーズの模倣”を意味する言葉ではない。



 「田舎町に/突然殺人ザメが襲来して/観光客が大混乱」から始まって、「Son of a bitch!」で締め括られる一連の基礎プロットについては、最早使い古されているので何を言うこともない。

 だが、本作の場合はそこに加えて、


『殺人ザメの生態に詳しい地元の漁師が登場するシーン』
『騒動の原因のサメとは別種のサメが、中盤で晒し上げられるシーン』
『深夜に二人の漁師がサメの捕獲へと乗り出すが、反撃に遭って失敗するシーン』



 などと、本家の非常に細かい箇所まで意識して本編に組み込んでいる。

 同時に、“町長(市長)の対応が本家より理性的かつ良心的”“科学者(フーパー)のポジションをヒロインの一人が担当”“保安官(ブロディ)のポジションには脇役の男性を配置”と、本家とはまた違ったアレンジも施されている。

 後に監督が自ら「本作はサメ映画が好きな人間のための作品」と語った通り、本作は安易な模倣に留まらない、本家に対するリスペクトで成り立った作品である。



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⒞Remember Dreaming, LLC

↑本作に女性科学者役で出演するのはブルック・ホーガン。ハルク・ホーガンの長女。
後に『ダブルヘッド・ジョーズ』にも出演。




 一方で、本作には水陸両用ザメ・『ビーチ・シャーク』という強烈な“独自要素”が存在する。

 いや、存在するが――



 陸を泳ぐサメどころか、空を飛ぶサメまで大量に存在する昨今を考えると、これはもう特別“独自要素”じゃないですね。



 時に流行とは悲しいものだが、本作には水陸両用ザメという設定を活かした、『ジョーズ』というより『トレマーズ』に近い捕食シーンが多数盛り込まれている。

 水陸両用ザメの出番は十分、活躍も十分。
 味が濃い近年のサメ映画と比べると、多少印象は霞むかもしれないが、B級映画として観た場合の出来自体は悪いものではない。



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⒞Remember Dreaming, LLC

『陸版ジョーズ』を文字通り地で行くビーチ・シャークの活躍。



 そして本作を語る上で欠かせないのが、町長の放蕩息子かつ事実上の主人公、ジミー・グリーンだ。



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⒞Remember Dreaming, LLC



 如何にも「最初に突然出てきて/騒動の原因を作った挙句/最後に死ぬ」“典型的なサメ映画小悪党”の風貌を備えたジミー。

 劇中でも彼は「己の商売と島の経済のために/殺人ザメの存在を無視して強引にサマー・フェスティバルを開いた結果/無数の死者を出す」“典型的なサメ映画大惨事”の通例に則って行動することで、周囲の顰蹙を買う。



 だが、彼は同時に「父親や仲間の死さえ大義名分に利用して、自分本位に仕事を進めていく反面、陰では本気で彼等の死を悲しんでいる」「普段は利己的な態度を見せているが、裏では些か乱暴な己の所業に罪悪感も覚えている」などと実に複雑な内面を抱えた、サメ映画には珍しい類の登場人物でもある。



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⒞Remember Dreaming, LLC



 そのようなジミーが、“手垢の付いた悪役”から“事実上の主人公”へと、覚悟と共に役割を変えて悪行を清算する終盤は、率直に言って「普通に良い」ので「必見」である。



 一種のヒューマンドラマとして細部まで練られた作品である――と言うと誇大広告だが、ジミーを含めた登場人物の“心情の機微”という部分については案外凝っているのも、本作の大きな魅力と言ってしまって構わないだろう。

 もっとも、“水陸両用ザメの設定”“水陸両用ザメを撃退する作戦”の部分については、良い意味で題材相応に粗いので、本作の“総合的な完成度”に対して、過度の期待は禁物であることも申し添えておく。
 そこが本作の短所でも、同時に長所でもある。



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⒞Remember Dreaming, LLC



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⒞Remember Dreaming, LLC



 というわけでこのビーチ・シャークだが、私の好きなサメ映画の一本だ。

 良くも悪くも豪快な内容の中に、目を凝らすと意外な見所が隠れている。
 勿論本作はあくまで『サメ映画』であって、上述の心理描写が本作の本質かと言えば違うだろうが、“大味な展開”の脇に添えられた“繊細な要素”が薬味に似て、良い塩梅に効いている。



 若干贔屓気味に持ち上げているかもしれないが、このビーチ・シャークはオススメである。

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コメント

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No title

主人公のラストの行動は笑うしかないわ
それも意味があったのか、なかったのかw

No title

ジミー(のお話で宜しかったでしょうか)のラストの行動については劇中で理由が描写されていますよ
それとは別にシュールなネタ・ナンセンスなネタを多数含む作品ではありますが

ちゃんとサメの存在をアピールするために、後半で砂浜から背ビレ出して泳いでるシーンを頻繁に使っているのが良い…

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No title

管理人さん短文ですみませんでした

サメ映画のお約束を、これでもかというほどに詰め込んだ映画でしたね。それでいてちょうどよくトンデモ具合やらなにやらで独自性を出している、不思議な魅力のあるB級サメ映画だったと思います。
あとジミーだいすき。

No title

ガラスに閉じ込めるとか悠長なこと言わないで、そのまま焼き殺せよとか思った私。

ボートを漕げよ〜♪川を下れ〜♪
主人公が主人公らしくなった終盤好き

No title

町長とジミーの親子は本当に良い味出してましたよね。