【ホラー映画】『ナイトメア・ビーストと迷宮のダンジョン』レビュー

『ナイトメア・ビーストと迷宮のダンジョン』

原題:THE DARK SLEEP
監督: ブレット・パイパー
出演: アシュレイ・ギャロウェイ, テイラー・ニコル・アダムス, スティーブ・ディアスパラ, ケン・ヴァン・サント, ボブ・デニス
備考:本作のベースはH・P・ラヴクラフトの『魔女の家の夢/魔女屋敷で見た夢』である


nb01
⒞2012 Tomcat films LLC.

 過去に『ビッグ・クラブ・パニック』の監督を務めた男、ブレット・パイパー。
 『ジュラシック・ビースト』『フランケンジョーズ』で一部界隈に衝撃を与えた“超新星”、マーク・ポロニア。

 これまで慄然たる作品を何本も生み出してきた二人のアウトサイダーが、あの『トムキャットフィルムズ』という狂気の山脈の下で、恐るべき漆黒の触手を密かに絡み合わせていた。
 そして低予算映画界という最も忌まわしき様相を帯びた深淵を根城に、面妖な環状列石の只中から密かに顕現していたのが本作・『ナイトメア・ビーストと迷宮のダンジョン』であるのだ。



 と言うと少し前口上が冒涜的に聞こえるが、彼等が作り上げてきた暗澹たる悪夢的過去作と比べると、今作の出来は意外に良かったと言えるだろう。少なくとも、我々<旧視聴者>が筆舌に尽くし難い嫌悪の念を抱いた、あの悍ましき作品群とは格段に品質が異なる。

 というわけで今回は、このナイトメア・ビーストと迷宮のダンジョンの魅力を、その冷たい窮極の深奥から掻き出していくかのように愚かしき姿勢でレビューしていく。



 ちなみに、『魔女の家の夢』は創元推理文庫のラヴクラフト全集5に収録されているよ。




 あらすじ

 ホラー小説の巨匠H.P.ラブクラフトの「魔女の家で見た夢」に基づくブレット・パイパーの最新作。

 ナンシーは新居へと越してきた。しかしその家の地下には古代カルト魔術の儀式が行われた場所だった。
 その残骸を発見したときから、異次元空間への悪夢を見ることに。

 度重なる怪奇現象の実態を聞いた妹のケリーも駆けつけるが、悪夢の世界へと捕らわれてしまう。
 妹を助けるため夢の世界に戦いを挑むナンシーだが…



 伝統的なストップモーションの特殊効果で再現されるモンスター達は必見!?
 これは時空を超えた面白さ!(パッケージ裏より引用)








 先に触れたが、『ナイトメア・ビーストと迷宮のダンジョン』は、H.P.ラヴクラフトの作品・『魔女の家の夢』がベースの作品である。
 もっとも、本作に含まれるクトゥルフ神話要素はエッセンス程度に過ぎず、基本はオリジナルの脚本・設定で話が進んでいくので、特に原作を知っておく必要はない。



nb05
⒞2012 Tomcat films LLC.


nb06
⒞2012 Tomcat films LLC.


nb07
⒞2012 Tomcat films LLC.

↑これは勿論“這い寄る混沌”・ナイアルラトホテプである。
合っているが、独特な邦訳を施している。




 そして肝心の内容だが、 “低予算で製作した怪奇物のポロニア・エンターテイメント作品”という点を踏まえて鑑賞した場合、十分に見られる出来である。
 普通に鑑賞した場合? 普通に鑑賞する人間は十中八九本作を借りない。

 というのも、


・他のポロニア・エンターテイメント作品と比べて、物語が一本に纏まっている。
・シーンの尺の配分も適度に考えられていて、鑑賞にストレスを感じない。
・完全に無駄かつ冗長な展開というものも少ない。
・ハンディカムを使用した拙い技術とはいえ、カメラワークのホラー演出にも拘っている。
・恒例のストップモーションで動く怪物はチープだが、挙動はスムーズで、手を抜いていない。



 とのように、“難点は山程多い”反面、“ホラー映画を楽しむ上で大事な要点はしっかりと押さえている”、真摯な作品でもあるのだ。
 信じられないかもしれないが、同社他作品――例えば『ジュラシック・ビースト』『ビッグフットVSゾンビ』などと比べると、出来が良いのは事実である。



nb02
⒞2012 Tomcat films LLC.

↑原作の怪物であるブラウン・ジェンキンも登場。冒涜的なストップモーションで動く。



 また、上記の項目を抑えている故に、本作が抱えている無数の欠点も、それはそれで“愉快に眺めていられるもの”へと変わっている。

 例えば、終盤で“突然ヒロインが三人に分身するシーン”



nb03
⒞2012 Tomcat films LLC.


nb04
⒞2012 Tomcat films LLC.



 一見すると訳が分からない上に、合成が露骨だが、割合真剣なストーリー軽快なテンポから繰り出される思ったより最悪の絵面は、見方次第では逆に愛嬌と受け止められるだろう。



 というわけでこのナイトメア・ビーストと迷宮のダンジョン、「分かっていれば観られるどころか、絵面から想像していたより面白かった」作品だ。



 勿論そこには「ポロニア・エンターテイメント作品としては」「得体の知れないB級映画としては」という枕詞が付いてくるとはいえ、それでも本作は観ていて楽しかった。

 不特定多数に薦める内容でもないが、少なくとも歴戦のマーク・ポロニアファン及びブレット・パイパーファンには、鳩尾を抉られる覚悟で胸を張って本作をオススメしておきたい。



 最後に、本作は『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』とは一切関係ない。

関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

オープンゲットかな?

No title

ミラージュアタックでしょ(適当)

No title

「マーク・ポロニアとブレット・ケリー」じゃなくてよかった

No title

一応このコメントフォームは作品に対する意見交換用に残してあるものなので、決して絶対厳守とは言いませんが極力映画の内容に関する書き込みをお願い申し上げます。

原題を直訳すればいいのに何で微妙にダサい邦題にするんでしょうかね…
クトゥルフものなら一定の顧客が着きそうな上に新解釈の邪神の訳語(邪神の真名の正確な発音は人間にはできないから)もいい味だと思うんですけど管理人さんはこの辺はどうお考えですか?

No title

>原題を直訳すればいいのに何で微妙にダサい邦題にするんでしょうかね…
そら便乗商法に決まってますがな(笑)

No title

迷宮とダンジョンって意味かぶってなくない?