【サメ映画】『PLANET OF THE SHARKS 鮫の惑星』レビュー

 タイトルが既に死兆星
『PLANET OF THE SHARKS 鮫の惑星』

原題:PLANET OF THE SHARKS
監督: マーク・アトキンス
出演: ブランドン・オーレ, ステファニー・ベラン, リンジー・サリヴァン, ローレン・ジョセフ, ダニエル・バーネット
備考:監督は『ビーチ・シャーク』や『ドラゴン・オブ・ナチス』の人


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⒞2016 SLIGHTLY DISTORTED PRODUCTIONS, LLC

 『サメ+ゾンビ』『サメ+機械』『サメ+幽霊』『サメ+人間』』と、最早八百万の神に近い活躍を続けるサメ映画。
 とはいえ、流石に人類の創造力にも限界が見えてきたのか、それとも視聴者が慣れたのか、基本的に『サメ+α』の方程式を使い回しているサメ映画の方向性には、逆に陳腐化した部分を覚えてきたところである。

 だが、数多の信者を抱える多神教の中の唯一神こと、アサイラムの発想は違う。



「サメに足すものが尽きたなら、今度はサメが暴れる舞台設定の方を変えてしまえば良い」



 というわけでサメは地球を支配した。

  いや、実際にはどのような企画会議が行われたのか知らないが、“温暖化の影響で生態系の頂点まで上り詰めたサメと人類の壮絶な死闘”を描いたのが本作・『PLANET OF THE SHARKS 鮫の惑星』 である。

 ちなみに、基本設定は『猿の惑星』というより『ウォーターワールド』に近い。




 あらすじ

 時は近未来。

 温暖化による氷河の融解の影響で、地表の98%が海に覆われていた。
 僅かな生存者たちは、海上に建てられた基地や船の上でなんとか生きながらえていた。
 もはや、地球の支配者は人類ではなかった。

 今、生態系の頂点に立っているのは獰猛な鮫であった。

 そして、さらなる水温の上昇で海中は食糧不足に陥り、空腹となった鮫は人間を狙い始めていた…。(パッケージ裏より引用)








 というわけでこの鮫の惑星だが、聞く分には質の悪い冗談としか思えない設定に対して、本作は案外真面目に内容が練ってある部類のサメ映画である。

 別に特別「出来が良い」という意味でもないが、本作は、


「サメが食物連鎖の頂点に君臨する地球」
「地球温暖化を特殊な方法で抑えることで、一気に海の水位を下げて陸を元に戻す作戦」
「唐突に現れた非常に知能の高いサメのボス」



 などの荒唐無稽な展開を、徹底してシリアスな作風で描いている。

 故に本作は同社他作品のサメ映画、例えばシャークネードやメガ・シャークに見られる何かコミカルな空気は薄い、硬派な作品と言えるだろう。



 一応「演技指導がどうなっているのか、あからさまに自分から海へと飛び込んでいく犠牲者役の人達」とか、「設定上では数百人の人間が住んでいる筈の大規模な海上施設に、僅か十数人の姿しか見えない」とか、色々と指摘を入れておきたい部分も多いが、一方でそこは笑って観られる範疇の箇所・許容範囲の楽しい欠点であるとも思う。
 他には、ほら、一瞬で壊滅した戦闘集団とか。



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⒞2016 SLIGHTLY DISTORTED PRODUCTIONS, LLC



 そして、本作の「強力な電磁波で魚群を統率して、集団で人類を襲撃するサメのボス」の存在は、絵的には多少地味とはいえ面白い。

 「妙に大きい」「陸を歩く」「空を飛ぶ」「+αで特殊能力を持つ」と何か『第四世代MS』のような恐竜的進化を続ける昨今のサメ映画において、『派手な武装は持たないが、特殊な改修が施されている量産型の隊長機』のような本作のサメの渋い設定は、昨今のメインストリームに多少捻りが加えられていて好印象である。



 まあ“地味”とか“渋い設定”とは言ったが、それはあくまで他作品との相対的な評価に過ぎない。
 勿論本作のサメも普通に“宙を舞って人類を襲う”ので、そこは安心して頂きたい。

 また、終盤には生き残った人類の面々が、サメのボスが放つ電流を利用してロケットを射出する。
 こうなると何が“地味”“勿論”“普通”だと言うのか自分でも分からないが、普通である。



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⒞2016 SLIGHTLY DISTORTED PRODUCTIONS, LLC

↑本作のサメのボス。ロレンチーニ瓶から放つ強力な電磁波のために鼻先が光っている。
クライマックスでこの設定を活かした展開を内容に組み込んでいるのもポイントが高い。




 しかし、本作――感想を率直に言うと、中盤以降が“ダルい”
 もっとも、内容自体は、


・“無駄な会話、すなわち本当に中身が虚無で尺を稼ぐ目的としか受け止められない会話は少ない”
“サメの出る場面では相応に気合が入っている”
“荒唐無稽な設定の中でも、劇中で最低限度の説明を入れる箇所と勢いで流す箇所を取捨選択している”



 とのように、随所で「そんなに手は抜いていない」とは感じる作品ではある。

 そこは本作の「好き」な部分ではあるのだが、それでは「面白い」のかと聞かれると、個人的には「サメ映画として纏まっているが、一方で話が盛り上がる場面も少ないので、割と微妙に思う」と答える。

 特に、本作の劇中では専門用語を“サメのボスの解説”や、“地球温暖化を食い止めるために必要な物資・機材の原理に関する解説”が頻繁に盛り込まれている。

 その一連の下りが不要とは言わないが、絵的に単調かつ淡泊に進むために、鑑賞していて飽きを感じてしまったのだ。

 もう少し何か気を引く言葉のユーモアか演出のフォローが足されていれば、同じ内容でも印象は変わったと思うが、この意見には私の嗜好が入り過ぎているかもしれない。



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⒞2016 SLIGHTLY DISTORTED PRODUCTIONS, LLC

↑例えばこのような台詞がもう少し多ければ俺に良し。



 他には良くも悪くもそこまで語る部分は思い付かないが、総評としては普段より少し力の入ったアサイラム作品である。

 素面で観るのはオススメ出来ないが、時間の余裕とビールを備えた上で観れば、サメ映画ファンなら案外行けるだろう。

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