【サメ映画】『シャーク・ナイト』レビュー

 「何故、鮫を借りるのか? 這い上がるためだ」
『シャーク・ナイト』

原題:SHARK NIGHT
監督: デヴィット・R・エリス
出演: サラ・パクストン, ダスティン・ミリガン, クリス・カーマック, キャサリン・マクフィー, ジョエル・デヴィット・ムーア
備考:監督はファイナル・デスティネーションシリーズの二作目・四作目や『スネーク・フライト』の人


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⒞2011 INCENTIVE FILM PRODUCTIONS, LLC


・“その数、46種類
・“46種類のサメを<凶器>に、<狂気>の殺人ショーが今始まる…。”



 上記の文句は本作・『シャーク・ナイト』に国内で付けられたキャッチコピーである。



 だが、本作の劇中には別に46種類もサメは出ない。



 というより5~6種類しかサメが出ない。



 と何か一種の経歴詐称に近いキャッチコピーを吊り下げて参上したこのシャーク・ナイトだが、冷静に考えると5~6種類のサメでも十分に多い方ではあるので、まあそこは置いておいて早速レビューに移ろう。




 あらすじ

 美しい水と緑に囲まれたクロスビー湖。
 この世の楽園にやってきたリッチな大学生サラと、6人の仲間たち。

 しかし、地元に取り残された男たちは、邪悪な欲望と共に、健康な肉体を持った餌食を待っていた。

 本来存在しないはずの湖に解き放たれた大小様々なサメ。
 やがて仲間の一人の腕が食いちぎられ、激しく動揺するサラたちの前に、地元のダイバーとその仲間が救助に現れる。
 しかし、それは彼らが仕掛けた残酷なショーの始まりだった。

 「ファイナル・デスティネーション」シリーズのデヴィット・R・エリス監督と拷問ホラーのジャンルを確立した「ホステル」のプロデューサーがタッグを組み、今、新たな凶器を手に、恐怖と衝撃の殺人ゲームが始まる…。(パッケージ裏より引用)








 このシャーク・ナイトだが、本作のサメは謂わば『小道具』であって、物語の中心で派手に暴れ回る『主役』ではない。

 本作は『パニック映画』というより、“サメを使ってスナッフビデオを撮るサイコパス”の活躍に焦点を合わせた『サスペンス・ホラー映画』である。





 特に、“田舎を訪れた今時の若者達が、気楽に騒ぐ光景を長々と描く序盤”や、“そこから中盤に掛けて一気に始まる惨劇”、続いて“姿を現す不審な人物”の展開は、完全にサスペンス映画、それも比較的スラッシャー映画に寄った作品の文法に則っている。

 そのため、本作に対して『ジョーズ』『ディープ・ブルー』のフォーマットを期待して観ると、少し「思っていたのと違う」という事態に陥るかもしれない。





 だが、本作に登場するサイコパス一同は、誰も彼も不気味かつ嫌悪感全開でキャラクターを立てている。

 何か口を開く度に一々「あっ、コイツとは話が通じねえわ……」と思わせる、そして実際に劇中でサメを使った凶悪な犯行に及ぶ彼等の造形は見事で、性悪な犯罪者の不愉快な魅力は、サメに代わって観る者を物語に引き込んでくれる。



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⒞2011 INCENTIVE FILM PRODUCTIONS, LLC

↑本作に登場するサイコパスの一人。
これは彼が「俺はこれまで46種類のサメを見てきたんだ」と語っている場面である。
別に本編に46種類”のサメが全て登場するわけではない。




 また、主人公達のキャラクターも、この類の作品には珍しいことに、「ホラー映画には特有の、馬鹿で軽率な若者達――と見せかけておいて、殆ど全員が義に厚い常識人」「喧嘩や乱交、薬物とは無縁の、概ね利他的な優しい大学生」であることから、余計に彼等を狙うサイコパス一同の残虐性が引き立ってくる。

 そのような登場人物の設定や描写、人物配置は、本作の立派な長所と言うべき箇所だろう。



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⒞2011 INCENTIVE FILM PRODUCTIONS, LLC

↑主人公の仲間の一人、モリス。
『キャビン』風に言えば『戦士』の枠を担う彼だが、実際は彼女や友人のことを非常に大切に思っている善良な人物である。
故に死ぬ。




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⒞2011 INCENTIVE FILM PRODUCTIONS, LLC

↑主人公の仲間の一人、ゴードン。
『キャビン』風に言えば『愚か者』の枠を担う彼だが、実際は主人公や友人のことを非常に大切に思っている善良な人物である。
故に死ぬ。




 また46種類も出ないとはいえ、本作には様々なサメが登場する。
 オオメジロザメ、イタチザメ、ホオジロザメのような定番のサメの数々から、何と本作には『ダルマザメ』まで登場するのだ。

 演出的な誇張表現は含まれるものの、その独自性を活かした“ダルマザメの捕食シーン”は、サメ映画というよりピラニア映画に近い内容の活躍が新鮮で、面白かった。



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⒞2011 INCENTIVE FILM PRODUCTIONS, LLC

↑本作に登場するダルマザメ。英名・『クッキー・カッター・シャーク』
サイコパス一同に飼われている本作のダルマザメは、魚群と化して獲物を襲うが、別にリーチは掛からない。




 しかし、上述のダルマザメを除くと、本作に登場するサメの捕食シーンには、(本作のサメがサイコパスの道具であることを踏まえた上で)多少不満が残る。

 決して出来が悪いわけではない。
 サメの迫力と演出は十分。
 登場する回数だけ見ればサメの出番も十分。

 だが、サメが画面に映る時間が全体的に短い。

 山場で「パッ」と出てきたかと思えば、即座に「サーッ」と画面から姿を消していくかのようなサメの活躍は、確かに効果的な要所を狙って「ズバッ」と登場してくるとはいえ、本編の大半がそれでは逆に単調で味気ない。
 演出自体には趣向が凝らされているので、ワンショットの絵面は強烈なのだが、出番が毎度瞬間的であるために、ワンシーンを通して鑑賞すると薄味な印象を抱いてしまったのだ。



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⒞2011 INCENTIVE FILM PRODUCTIONS, LLC

↑繰り返すが、“一瞬の迫力”という点では派手に決まっている。
また、本作は元々3D映画である。
当然、山場では“「ワッ」と画面外に飛び出す”演出を複数盛り込まなければならない都合上、長い演出は使い辛かったのかもしれない。




 と多少難点にも触れたが、(サスペンス・ホラー映画として)馴染のフォーマットを良い具合に弄ったキャラクターや、創意工夫を凝らした猟奇的な展開の数々は、概ね丁寧に纏まっている。

 また、「サメの出番が短い」5~6種類しかサメが出ない」とは言ったが、大体サメ映画には5~6種類どころか1種類のサメさえ普通に見せられない作品が多いので、本作の格は自動的に上がる。



 というよりサメ映画にはもう何か「作品として最低限度の体裁が整っているなら名作映画カテゴリで良いんじゃねえかな」みたいなところもある。



 これは少し絶望を極めた相対的な評価の暴論だが、それはそれとしてこのシャーク・ナイトはそこまで悪いものではない。

 悪趣味なサイコパス一同の嗜好や、中盤以降に始まる陰鬱な展開には好みが出るかと思われるが、メジャーからマイナーまで様々なサスペンス・ホラー映画を普段から観ている方なら、本作を嫌う要素はないだろう。



 というわけで『シャーク・ナイト』、総評としては結構オススメです! 勿論単体で見た場合の評価でも!



 最後に、本作はエンドロールの後に、登場人物一同による訳の分からないキャラクターソングのようなラップが始まる。
 これは……ちょっと笑えるので、絶対に聞いておくことをオススメする。

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コメント

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今作のアオザメ(ラストシーンで顔を見せたのもコイツ?)がホホジロザメより大きかったのが驚きでした(そこかい)

主人公グループが本当にいい人達ばかりなので死んだときは私の精神的ダメージがデカかったですね
私としてはそれだけでもう良作映画です

No title

ジャケット絵に鮫が出ない鮫映画は良作の法則。

No title

これのパチモンもレビューして、どうぞ

No title

↑言っちゃ何だがB級なのにこれのパチもんまであるのか(困惑)

No title

「お前の股間が~」って言ってる役者BONESのフィッシャー?

No title

いつも面白いレビューありがとうございます。
ところで本文の間にある画像のキャプションですが、ちょっとフォントサイズが小さくて読みにくいので大きくしていただけないでしょうか?