【スラッシャー映画】『アリス・スウィート・アリス』レビュー

 “ブルック・シールズ出演作”
『アリス・スウィート・アリス』

原題:Alice Sweet Alice/COMMUNION/Holy Terror
監督:アルフレッド・ソウル
出演:ブルック・シールズ, ポーラ・シェパード, リンダ・ミラー, トム・シニョレッリ
備考:本作で12歳の少女・アリスの役を演じるポーラ・シェパードは、撮影当時19歳であった


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⒞2014 WHD Japan.


 本作は当初『COMMUNION』という原題で公開されたものの、世間の反応は薄かったとのことだ。

 だが数年後、本作に端役として出演していたブルック・シールズが『プリティ・ベビー』で脚光を浴びた折に、『COMMUNION』から“ブルック・シールズ出演作”『Alice Sweet Alice』と改題して公開したところ、絶大な支持を受けたという作品が、このアリス・スウィート・アリスである。



 ブルック・シールズ一番最初に死ぬけどな!



 そして数年後、ブルック・シールズが『青い珊瑚礁』で注目を集めた折に、『Alice Sweet Alice』から“ブルック・シールズ出演作”『Holy Terror』と改題して公開したところ、再度高い評価を得たとも語られている。
※もっとも、本作が公開された当時、私は生まれていなかったため、上記の薀蓄は全て、鑑賞の後日に複数の映画関係サイトで調べた伝聞に過ぎないが。

 しかし、実際本作の内容は良く、当時何度も話題になったというのも頷ける出来だと思う。

 というわけで今回はこのアリス・スウィート・アリスをレビューしていこう。




 あらすじ

 12歳のアリス(ポーラ・シェパード)は、母親につれられて、妹カレン(ブルック・シールズ)と共に教会へ行った。
 神父にも可愛がられ、母親の愛情を全て受けているかに見えたアリスは、妹に嫉妬を覚えるのだった。

 ある日、アリスの歪んだ欲望を具現化するかのように、教会でカレンが惨殺される。
 事件の捜査にも、家族にも反抗的な態度を示すアリスの犯行なのか?

 見え隠れする謎の黄色いレインコートの殺人鬼とは・・・(パッケージ裏より引用)






 一般的にはスラッシャー映画として扱われることが多い、このアリス・スウィート・アリスであるが、その内容は“怪物や仮面の殺人鬼に、次々と馬鹿な若者が殺されていく様を楽しむ類の、単純娯楽映画”とは毛色が異なる。

 というのも本作は、“何かと他人に対して反抗的かつ暴力的な態度を取る、12歳の少女・アリスと、彼女を中心に据えた人間模様を描いたサスペンス映画”といった側面も強い作品なのだ。



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⒞2014 WHD Japan.



 劇中、本作のヒロイン・アリスが、自分より周囲から可愛がられている妹・カレンに悪質な悪戯を繰り返している光景が、冒頭から何度も映し出される。

 実際、アリスは非常に心が歪んでおり、暴言・窃盗・脅迫など、普段から様々な問題行動を起こしている。
 それゆえ序盤に妹・カレンが“棺に詰められた焼死体”となって発見されると、日頃の素行不良と現場での不審な行動が重なり、年端も行かぬ少女でありながらアリスは容疑者として一番に疑われてしまうのだ。

 だが、アリスの奇行が特に挙げられる一方で、同時に、“アリスの母・キャサリンは離婚していること”“妹・カレンとアリスで周囲の対応が完全に異なること”“アリスの叔母・アニーはアリスに複雑な感情を抱いており、神経質な態度で彼女に接していること”など、“彼女を取り巻く環境にも問題があったこと”が、物語の端々で仄めかされていく。

 そして、アリスは度々「私は要らないの?」「私を病院に入れたいんだわ」などの言葉を両親に吐き、一方で“自分の初潮”などの情報は家族にも伏せている。
※後者に関して補足すると、「家族には隠していたが、自分を担当する初対面の精神科医には話した」というのが劇中でのポイントである。

 つまり、一見すると性悪な彼女の問題行動には、他人への不信感と、家族からの疎外感が根幹にあるわけだ。



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⒞2014 WHD Japan.

↑アリスを診断した精神科医。
本作を象徴するかのような一言である。




 しかし一方で、アリスの問題行動には「複雑な家庭を加味してなお、本人に元々異常な気質が備わっている」と思わされる点も多く、完全に彼女は被害者――とも言い切れない。
 また、妹・カレンが特別に可愛がられていたとはいえ、「内心では家族や親戚もアリスを本気で気に掛けていたが、彼女には手を焼かされていたため、各々対応に困っていた」節が感じられるのも悩ましい。

 そのような、“題材が題材だけに、アリスと周辺の人物の善悪を安易に分けず、かといって曖昧に濁したわけでもなく個々の問題は明確に示している”という丁寧な描写の匙加減が、本作の秀逸な部分だろう。



 そして妹・カレンの惨殺に続き、叔母・アニーが殺人鬼に襲われる事件が起こり、アリスは警察の取調べや、精神鑑定などを受けていく。
 だが、“嘘発見器では真実を語っているのに、発言内容は矛盾には見られる”“精神分裂の兆候がある”、彼女の証言は大して意味を成さず、結局真犯人は分からない。

 果たしてアリスは本当に『黄色いレインコートの殺人鬼』なのか――というのが、本作の概要である。



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⒞2014 WHD Japan.

↑本作に登場する『黄色いレインコートの殺人鬼』
ビジュアルは『赤い影』のオマージュだと監督自ら公言しているという。


 

 とここまで脚本面について述べてきたが、本作は演出面でもまた素晴らしい。

 常に不安を煽ってくるかのようなカメラワークや、不気味に印象的なディティールの数々に、突然の悲劇に翻弄される序盤の惨劇シーンや、『サイコ』を巧みに模しつつ独自要素も取り入れたかのような中盤の襲撃シーン、そして黄色いレインコートの殺人鬼が仮面を外した一瞬の衝撃など、“70年代の低予算スラッシャー映画”という看板に反して以外にも細部まで拘られている。
※まあ、“70年代の低予算スラッシャー映画”という字面から、鑑賞前の期待値が適度に調整されていた反動も、個人的な絶賛の下敷きにはあるが。



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⒞2014 WHD Japan.

「死んだ妹・カレンが蘇って叔母を襲った」と父・ダンに訴えるアリス。
父の背中で笑う人形は、アリスが妹から盗んでいた品である。




 もっとも、難点もまた二つほど、感じなかったわけではない。

 一つは、本作の序盤、人間関係の説明を省いて展開が進むため、登場する人物の名前と立場が若干分かりにくく状況把握に時間が掛かる点。

 もう一つは、真相が判明した終盤、意外性こそ大きかったものの、突然の出来事の辻褄を合わせるかのような犯行動機の告白に尺を取られているため、それまで本作の主軸であったアリスの存在が薄まっている点だ。
※事件に至った背景の説明は少し唐突に思えたが、『黄色いレインコートの殺人鬼』“正体”自体には伏線が張ってある。

 特に後者は、本作を『アリスとその家族の物語』として観ていた私には、少なからず困惑してしまう箇所でもあった。



 だが、このアリス・スウィート・アリス、総評としては面白かった。

 決して派手な見所を続々と盛り込んだスラッシャー映画ではないことは重ねて念を押すが、それとはまた別種の魅力が味わい深く、非常に印象に残った作品である。
 1976年のスラッシャー映画(『ハロウィン』『13日の金曜日』以前の作品)であるため、当然随所に古さも感じさせられるが、それはそれとして独特の良さも多い一本だ。



 万人には受けない作風かもしれませんが私は好きです!
 以上!




※2017/02/21追記:
 本作では、“カトリック教会”の存在が重要な意味を持っている。
 もちろん、関連する知識がなくとも楽しめる作品だが、そこに注意しつつ、
 アリスの受けている待遇に着目してみるのも、更に本作への理解が深まって面白いかもしれない。
 (と知った風な口を聞いているが、鑑賞当時の私は普通に「何か変だな」程度でスルーしてしまっていたので、改めてここに記す)


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brooke shields bathtub photos
わしもブルックシールズも歳くったのぅ

Z級映画以外もレビューするのか...