【スラッシャー映画】『アクエリアス』レビュー

 世界で最も美しいスラッシャー映画の一本
『アクエリアス』

原題:AQUARIUS/STAGE FRIGHT
監督:ミケーレ・ソアヴィ
出演:デヴィッド・ブランドン,バーバラ・クピスティ,ドン・フィオーレ,ロバート・グリゴロフ
備考:ポカリスエットのライバル


 アクエリアス01
⒞1986 FILMRAGE PRODUCTION S.R.L

 『デモンズ』や『サスペリア』などで有名なホラー映画界の巨匠、ダリオ・アルジェントの弟子にして、デモンズ作ってないのに邦題で勝手に『デモンズ3』『デモンズ4』『デモンズ5』『デモンズ'95』などと自作にナンバリングタイトルを付けられた結果、日本では『デモンズ作ってないデモンズの人』との異名を持つ鬼才、ミケーレ・ソアヴィの処女作がこの『アクエリアス』である。



 いきなり大変いい加減なエピソードからレビューが始まってしまったが、本作に込められたミケーレ・ソアヴィのセンスは本物なので、未見の方はどうかもうしばらく席を立たないで頂きたい。




 あらすじ

 郊外の古い劇場にて、梟頭の殺人鬼を主役とする、ホラーミュージカルのリハーサルが行われていた。
 開演までもう時間も少なく、追い詰められた状況の下で、不運にも足を痛めてしまった主人公のアリシア。彼女はスタッフに隠れてこっそり劇場から抜け出すと、手当のため病院へ向かう。


 しかしそこには精神を病み、過去に十数人を殺害したという、元俳優にして本物の連続殺人犯が収容されていたのだ。

 何を思ったか狂人は、舞台に戻るアリシアを追って病院を脱走。そのまま誰も知らぬ間に、一人楽屋へと潜り込む。
 そして彼は殺人鬼役のキャストを襲うと、自ら梟頭の仮面を身に着け、密閉された劇場の中で、世にも悍ましい惨劇を繰り広げるのであった―



 設定からして既に良いじゃない。

 さて、本作の筋そのものは、“個性的なコスチュームに身を包んだ殺人鬼が、次から次へと人々を殺していく”という、至って平凡なスプラッター映画のそれである。だがこのアクエリアスは、


・テンポの良い話の運び
・ナイフ、ドリル、チェーンソーなど、舞台用の小道具によるバラエティー豊富な殺戮
・光と影を最大限に活かした、スプラッター映画であるにもかかわらずどこか幻想的な映像美



の三点によって、凡百のホラー映画とは一線を画す品質を誇っているのだ。



 特にラスト約30分前から始まる、“梟頭の殺人鬼が、それまでに殺してきた犠牲者達の死体を舞台に飾りつけていく”シーン。
 字面で見れば悪趣味に思えるかもしれないが、“舞い散る羽毛に輝くような色彩、そして荘厳な音楽の中、死人に囲まれて一人寛ぐ殺人鬼”という強烈な映像を実際に観ると、そこからは何か神々しいものさえ感じられるようである。

 シチュエーションだけで言えば、他の映画にも同じようなシーンは散見されるが、それをここまで芸術的に昇華した作品はそう多くもないだろう。



 また、上記の場面から続いて十数分間に渡る“悲鳴以外の台詞を一切廃した主人公と殺人鬼の攻防”も、純粋なホラー映画としての迫力に満ち溢れている。果たして生き残るのは一体誰なのか?


 チープな演劇から始まった、高尚な惨劇のクライマックスからは、最後まで目が離せないこと請け合いだ。





 とはいえ本作、別に完全無欠の作品というわけではない。
 脚本の面では観ていて雑に感じる部分も、それなりに多かった(例:「どうして世間を騒がせた連続殺人犯が病院の玄関から割とすぐ傍に幽閉されてるの?」「ラストのオチはちょっと適当じゃね?」「間に挟まる警察官同士のコント要らないんじゃ……監督! 監督本人じゃないか!」)。


 だがそれを差し引いてなお突出した才気と独特の魅力が、このアクエリアスには存在する。
 より完成度の高い映画、人気や知名度で勝る映画は星の数ほどあるだろうが、『アクエリアス』はこの一本だけなのだ。

(とかちょっとそれっぽいこと言っちゃったけど、もし私が知らないだけで他に似たような作品があったらゴメンね! でも私にとってはこれ一本だけだから!)



 不朽の怪作、アクエリアス。この映画は大勢で賑やかに観るよりも、その神秘的な雰囲気に浸りつつ、作品へと一人静かに溶け込むようにして観ることをオススメする。





 今回言い回しがめっちゃ恥ずかしいけどいいじゃん! 好きなんだから!

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コメント

非公開コメント

凄く面白そうBlu-ray買います。

死体と遊ぶな子供達・・・って普通遊ばないよ

はじめまして
私は割と年季の入ったホラー映画ファンですが、この作品のイメージは、誰にも借りられることのないまま、陳列棚で埃をかぶって日に焼けたVHSパッケージです。
100円レンタル期間に借りて予想外のできに驚いた口です。ハードカバーが同様に意外な良作だったなぁ。
いやまあ、90年代におけるレンタルビデオのホラー映画なんて、どこもそうだったんでしょうけどね。

ホラー映画と古本あさりはたまに本当に玉があるからやめられない。

No title

自分以上にこの作品の魅力を理解し語れる人間がいて
どこか嬉しい気持ちになった

レビューを見て購入しました

知的風ハットさんの言う通り 死体を飾りつけ堂々と座り、猫ちゃんを膝に乗せているシーンはまさに狂気の美学でした。作品から感じるのは光もさることながら音楽による恐怖感と不気味さ+主役さんなど女性(首を絞められナイフで刺された)から感じるエロスとホラーがありました。
ミケーレ・ソアヴィの師匠である
ダリオアルジェント製作&脚本ルチオフルチの肉の蠟人形にもエロスとホラーの融合があり、お弟子さんならではだと感じました。
個人的に警察官のシーンはすごく面白かったです。