【POV映画】『アマゾン・クルーズ』レビュー

 結論から言うとジャングルは牙を剥かない
『アマゾン・クルーズ』

原題:DARK AMAZON
監督:ダルシアナ・モレノ・イゼル
出演:ミナ・オリヴェラ, ドン・ジェネス, ミシェル・テイラー, エミリオ・ダンタス, マーク・アラン
備考:原題を縮めて駄マゾンと呼ぶと良い


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⒞2014 DARCYANA MORENO IZEL

 このアマゾン・クルーズだが、いかにもパッケージで本作の目玉のように牙を剥いている動物の数々は、中央真下の『人類』を除いて全員、数秒だか十数秒しか本編に出ない。



 もう少し詳しく述べるならば、パッケージの動物は基本的に、“場面転換の繋ぎとして挿入される資料映像に一瞬登場する”か、“本筋と一切関係のない場面で雰囲気作りのための小道具として一瞬登場する”かといった、それだけの役割しか劇中で持たされていないのだ。

 もっとも本作は“アマゾンの奥地に潜む精霊・アンヤンガが、ジャングルを訪れた人々を襲う”というホラー映画であり、つまり本作は最初から動物を軸に据えたアニマル・パニック映画ではない。
 そのため前述の問題の責任は制作会社ではなく、内容を無視して動物をクローズアップしたパッケージを採用した日本の映画会社(注:アルバトロス)にあるだろう。



 もっとも、そのアマゾンの奥地に潜む精霊・アンヤンガは、ラストで数秒しか画面に映らない。



 そりゃまあ嫌が応にも動物をクローズアップするしかなかったわけだ! 他に何も出ねえんだもんな!



 というわけで『アマゾン・クルーズ』である。




 あらすじ

 密林に生息するカエルの酵素からガンの特効薬を作るため、アマゾン奥地に踏み込んだ製薬会社の研究チーム。

 世紀の発見に成功した彼らを待ち受けていたのは、血も凍る恐怖との遭遇だった。

 探検8日目、クルーの1人がバラバラに食いちぎられた死体となって発見される。惨劇は続き、次々と増えてゆく犠牲者。
 原住民が恐れる、森の守護神“アンヤンガ”の仕業なのか?

 方向を見失い、ジャングルを逃げ惑う生存者たちだったが…。 (公式HPより引用)






 このアマゾン・クルーズだが、悪い意味で妙な作品だ。



 本作、序盤から後半までは、ガンの特効薬の材料を求めてアマゾンを探検する研究チームの一行が、『画面に映らない未知の脅威っぽい何か(=アンヤンガ)』『ちょっと木や草が揺れる程度の演出』『森の守護神にしちゃ精密機器に詳しいなと思わされるような微妙なノイズの演出』で度々脅されたり、『画面に映らない怪物っぽい何か(≒アンヤンガ)』に時々殺されたりしながら、展開に起伏もなくスローテンポ気味に探検を続けていくという、率直に言って一般的な駄目な部類のPOV映画の典型例である。



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⒞2014 DARCYANA MORENO IZEL

↑序盤に道を教えてくれたり、アンヤンガの話を聞かせてくれる原住民の一人。
他にないので消去法でここが見所だ。




 ホラー映画を標榜しながら、実質無味乾燥な会話とハンディカムカメラの映像だけで話を進めているため、他に語る内容の皆無な本作は、それだけで十分退屈な作品とも言えるのだが、本当の問題は前述の箇所以降の終盤にある。





 何者かの手によって一人また一人と仲間が死んでいき、心身共に疲弊していく研究チーム一行。
 過酷を極めた状況の中、一名の生存者が唐突に、『ガンの特効薬は完成しない』『ガンの特効薬が完成したところで、それが人類全員に行き渡るはずが―』『そしてガンの特効薬が完成してしまえば今度は別の問題が―』などと語り出し始める。
 そしてアンヤンガの存在はどこへやら、それまでせいぜい“登場人物にジャングルを探検させる動機付け程度に過ぎなかったガン関連の設定”に向けて、突然『取って付けたようなインスタント社会派メッセージ』が脈絡なく付与されるのだ。



 挙句、“ガンの特効薬云々について議論を終えた”かと思えば、“ガンや上記の社会問題とはまったく関係ないアンヤンガが颯爽と現れて登場人物を全滅させた”後に、「果たしてガンの特効薬は本当に完成するのだろうか―?」などと前後の場面を無視した頓珍漢なテロップが流れた上でこの映画は結末を迎える。



 ちょっと構成が歪じゃないか。



 前半も退屈ではあるのだが、それでも内容は纏まっていた。
 だがクライマックスになって不意にそれまで作品を彩るエッセンスに過ぎなかったガン要素を説得力もなくメインディッシュのように出されたところで、味が薄くて食べられたものではなく、本作に懸けたシェフの気合も伝わらない。

 そのような後半がどれほど支離滅裂で酷かったか、私の実力不足のため文章では分かりにくいかもしれないが、ここであえて他の作品を用いて例えるとするならば、



 『13日の金曜日』のラストで、ジェイソンがヒロインに対して突然、「僕が死んだのは事実上クリスタルレイクの監視員が職務放棄していたせいだけど、それはつまり低賃金重労働で若者を酷使する社会が悪いということなんだ……頼む……僕に代わってアメリカを救ってくれ……! だがそれはそれとして死ね!」とかどうとか言い出した”ぐらいの無茶加減が本作には存在している。



 無論、上記の比喩はいささか誇張表現気味だが、実際のところ私は本作を観てそれに近い感覚を味わってしまったのだ。



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⒞2014 DARCYANA MORENO IZEL

↑場面転換の折に少し画面に映る動物の内の一匹。
可愛い。




 そのような本作だが、唯一終盤で“生存者の一人の正体が×××××××の手先だった”という展開には、多少驚かされるところがあった(ネタバレ防止のため伏字にしてあります! 本編を観れば一発で分かるから借りてみてね!)。

 だが、長所と呼べるような長所がそれだけでは、やはり本作最大の短所である不筋を肯定することは難しい。

 私見としては、卑怯な集中線がインパクトを煽るパッケージのイラスト以上の見所を探し出すのは厳しい作品だろう。
 少なくとも当ブログでは、「この映画を観るより、一度動物園に行ってから帰りの電車でガン関係の医学書でも読んだ方が十倍は有意義」という総評を述べさせて頂く。



 しかしまあ、最近は佳作や良作の割合が増えてきたような印象の強いアルバトロスから、まだこの映画みたいなレベルの高い作品が出てきたことが、悲しい反面内心少し嬉しかったことは内緒だ! 男と男の約束だぞ!



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コメント

非公開コメント

No title

「地球ドラマチック」か「ダーウィンが来た」の、アマゾン動物特集見た方がなんぼかマシそうだなぁ
タイトルはやっぱり、ディズニーのジャングルクルーズが元ネタなのかしら。

No title

ひさしぶりに動物奇想天外を見たくなりました。

予告を見ただけで分かる水曜スペシャル臭
ナレーションと例のbgmが欲しくなる

製薬会社とアマゾン…アナコンダかな?

No title

これでレベルが高い方なのですね…(戦慄

そういえば最近ピラニアとアナコンダが悪魔合体してジャングルに来た人々を襲う映画見かけましたね、この映画の親戚かな?

つまり、デスサファリやサファリはまだ序の口だったという事ですね。
これは、みないと