【サメ映画】『ディノシャーク』レビュー

 サメがヘリコプターを落とすシーンは笑えたよ
『ディノシャーク』

原題:DINO SHARK
監督:ケヴィン・オニール
出演:エリック・バルフォー, イア・ハスパーガー, アーロン・ディアズ, ハンベルト・ブスト, リチャード・ミラー
備考:安定のコーマン作品である


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⒞2009 Rodeo Productions

 サメ映画史において、これまで数多のサメが問答無用で爆殺されてきた。

 火薬、電流、水流、圧縮空気などと手段は様々だが、古今東西、“大抵のサメ映画はサメを爆発四散させている”という歴史的事実は既に誰もが知っている一般教養の領域に差し掛かっており、サメ映画界では「夏の夜などは花火よりサメの方がよく打ち上がる」とも囁かれているほどだ[要出典]

 だが本作のサメ・『ディノシャーク』は一味違う。


 彼の持つ鋼のように厚い肌は、軟骨魚類にあるまじき鉄壁の装甲であり、劇中でも機銃掃射や手榴弾の直撃にも耐え凌ぐほどの強度を誇るという、過去の軟弱なサメ映画とは別次元の防御力を見せつけてくれるのだ。


 もっとも、冷静に考えると大抵の生物は爆風に巻き込まれれば死ぬのが当然なのだが、それはともかく今回はこのディノシャークをレビューしていこう。




 あらすじ

 メキシコ プエルトリコ。

 船で世界を放浪後、街に戻って来たトレイスは救助隊が謎の巨大生物にボートごと食べられてしまう現場を目撃する。
 警察はイタチザメに襲われたとして事件を処理するが、親友を失ったトレイスは水棲生態系の環境科学の専門家キャロルとともに独自に追跡を始める。

 調査を進めるうち1億5000万年以上前に絶滅した巨大な鮫『ディノシャーク』がその生物と酷似していることに気づく。実は3年前にアラスカの氷河が崩れ落ちた時、氷の中に閉じ込められていたディノシャークが海に放たれ、命を吹き返していたのだ。

 橋を飛び越え湾に入り込んだディノシャークは、ヘリや船を次々と襲い、犠牲者は増え続けていく。
 トレイスは親友の仇と、そして街のために決死の覚悟でディノシャークとの対決に挑む…。(パッケージ裏のSTORYより引用)








 本当に毎度似たような評を述べているが、このディノシャーク、本筋は王道一直線であり、登場人物は特別個性的とも言わないが十分魅力的、振り返ってみればサメの出番も尺の中で適度に確保されている、一見すると正統派のサメ映画である。

 要素を個別に抜き出して語れば悪く言うほどの出来でもなく、部分的には良作と呼んで結構な作品のようにも思えるサメ映画、それがディノシャークだ。



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⒞2009 Rodeo Productions

↑本作のサメ・『ディノシャーク』
はい、サメというより恐竜みたいな顔だって、家族にもよく言われるんですよ。




 しかしながらこのディノシャーク、安心して他人に薦められるようなサメ映画なのかと聞かれれば、そこで「えっ? いや……どうかな……」と言葉に詰まってしまう作品でもある。


 というのも本作、一々シーンのテンポが悪く、尺を稼ぐためか“何かと登場人物が本編と関係もない過去話や体験談について語り出す”ため、単純明快な展開が、微妙に遅い進行と極端に薄められた内容によって妨げられているのだ。

 そこに恒例の環境映像がシーンとシーンの合間に度々挟み込まれて本編を余計に引き延ばしているのだから、観ている側としては本作に対して素直に飽きてくる



 また、ディノシャークが設定上防御力特化のサメという特徴を持つ点については既に触れたが、それを活かしている場面は終盤も終盤にしか見られず、またサメ映画の肝とも言える捕食シーンの演出などは大半が“視界の悪い海の中で雑に噛む”程度に過ぎないため、全体的には結局凡百のサメ映画と大差ない出来に感じられてしまうのだ。





 他には、本作のヒロインである生物学者の性格が定まっておらず、展開によって左右に振れ過ぎているのも、本作で特に目に付いてしまう点だろう。

 例えば序盤では、親友を殺したディノシャークに対して、ヒロインは「復讐のためにもサメは必ず殺す」と宣言している。

 しかしディノシャークが貴重な古代生物だと判明した中盤では一転、「サメは殺さず生かして捕らえるべき」などと真逆の主張を始めるのだ。

 かと思えば終盤において、主人公の作戦により隙を晒したディノシャークに向け、止めを刺すべくヒロインが放った台詞がこれである。



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⒞2009 Rodeo Productions



 情緒不安定過ぎるだろ。



 と本来良作だったはずのサメ映画に積極的に短所を加え凡作まで下げたかのようなディノシャークだが、もちろん長所は長所で別に持っている。

 終盤の“ボートから空に飛び手榴弾を投げつける主人公と宙を舞うサメが海面で交差する”戦闘シーンの演出などは、割に凝っていてこれが案外観ていて楽しめ、終盤ではサメの捕食シーンの演出も序盤~中盤とは比較にならないほど丁寧に作られており、テンポについても単純に無駄なシーンが減っているため、作品の後半では全体的な出来が飛躍的に改善されているのだ。



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⒞2009 Rodeo Productions

↑海上へと跳ね獲物を襲うディノシャーク。
彼、海にいないときの方が輝いて見えるんですよ。




 というわけで本作、総評としては「ラスト約15分だけ観れば余裕で良かったと言える」作品である。



 とはいえ、最初の約75分がいかんせん凡庸を極めたような出来であるため、本作を笑って観るためには、終盤までアルコールで適度に記憶を飛ばしながら適当に画面を眺めていなければならない(注:本編は約90分である)。

 少なくとも緊張感や爽快感のようなものは得られず、代わって既視感と倦怠感で本編の大部分を占めているのがこのディノシャークであるため、そこを補うためにも外部からの刺激によって脳内麻薬を分泌しつつ、質の上がるラストまで自力で満足感を維持しておく必要はあるかと予想される。

 そこまで後半まで耐えなければならないなら何か別の名作映画でも借りてきた方が良いかもしれないが、本作からサメ映画に手を出そうと試みる初心者の方々は、あえて前半も素面で観ることにより、「あー、サメ映画ってこんなモンなんだー」と経験を積んでおくことで、後に控える更に険しい試練※1のための簡単な修行として、この映画は凄惨かつ困難な局面※2で活きてくるだろう。
※1:サメ映画の意
※2:サメ映画の意



 まあ製作総指揮がロジャー・コーマンだと先に分かっていれば、前半も相応に観れる程度の作品じゃないかな。うん、別に褒めてないよ。


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コメント

非公開コメント

『ディノクロコ』観よ…(小声)

No title

さ・・・め?
モササウルスとかディノスクスじゃダメだったのだろうか。

鮫が過去から甦りすぎなサメ映画
たまには未来とか宇宙から来ないのか

自然解凍はサメ(メガロドン)の十八番だな

No title

つまりこれは来るべき強サメ映画との戦いの為に乗り越えるべき試練サメ映画に備えて見ておくべきサメ映画ということか…

もぅマヂ無理。ジョーズ観た…

素晴らしい!

初めましてのび太です!
のび太も大好物なB級(C,D?)映画をここまで分析し、尚且つおすすめ部分がよく伝わってくるなんて素晴らしい!
自分の映画ブログの際には書き方参照させて頂きますね!
更新楽しみにしております!

No title

ホントに何故これとフライングジョーズに吹き替え入れてハイブリッドとアイボーグに吹き替え入れなかったんだよANG(とアメイジングd.c.)…

テレビ東京で放送されてるのを今見てるけど、マジでレビュー通りですよ。

後半がCG良し、演技良しで面白いですね。

No title

「あれはサメじゃない」by主人公
よってこれはサメ映画では…(こじつけ)

お決まりのメガロドンの化石から、復元図どうしてそうなった
個人的に嫌いではないけど、人におすすめはちょっと難しい…

P.S.
所で最近サメ映画のあたり多くないっすか

No title

Amazonプライムにて配信開始されたみたいですよ❗