【サメ映画】『シャーク・ハンター』レビュー

 クエストに失敗しました
『シャーク・ハンター』

原題:SHARKHUNTER
監督:マット・コッド
出演:アントニオ・サバト・Jr, クリスチャン・トゥラーリ
備考:制作会社はB級映画ファンには有名かもしれないUFOである


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⒞2002 SHARKHUNTER PRODUCTIONS, LLC

 かつて日本で『W-JAWSキャンペーン』という企画が行われていた。

 それは国内の映画会社が二社合同で、二本のサメ映画を同時にリリースするという、規模としては実に慎ましい企画ではあったが、それでも2002年当時の八月、既に停滞気味だったサメ映画界にとって、上記のイベントは真夏にもかかわらず桜の花弁を僅かに含んだ新しい風のように、温かく迎えられたことかと思われる。



 だが2016年現在、関連キーワードで検索しても三件程度しかヒットしないどころか、そのうち一件は去年の私のツイートである辺り、通常の映画業界にとってはクソ湿気の籠もったクソ微風に過ぎなかったのだろう。

 そのように、不本意にも日本で作った武勇伝に対してこの十数年作品の知名度は一向上がる気配を見せないのが本作、『シャーク・ハンター』である。


 いやまあクソ映画なんだろうけど、一応私は嫌いじゃないよ。


※1979年にも『シャーク・ハンター』という、本作と同じ邦題を持つサメ映画が存在しますが、この記事では2002年のシャーク・ハンターを取り上げています。

関連:【サメ映画】『メガロドン』レビュー




 あらすじ

 穏やかな夜の海、スペンサーは彼の両親と広々とした海を満喫していた。
 その時突然、、巨大な怪物が海底から急浮上、彼らに襲いかかり、ファミリーヨットを粉々にし、スペンサーの両親が犠牲になる。そして怪物は泳ぎ去っていった…。何故か幼いスペンサーだけを残して…。

 20年後。スペンサーは大学で深海艇について教えていた。今や彼は深海艇及び潜水艦のエキスパートとなっていた。
 ある時、マリアナ海溝の深海にある研究所の施設が破壊され、300人以上の研究員が犠牲になるという事故が起こる。他の潜水艦や深海艇から、何の警告も無線での連絡もなくそれは起こっていた。その原因究明の為、スペンサーは当局に呼び寄せられる。

 彼が事故の跡を調査するうちに、9インチの大きさの鋭いサメの歯を発見する。それは、かつて海に生息していたという伝説上の生物、その名もメガロドン。巨大な先史時代のサメ…。

 スペンサーはメガロドンが棲息する場所を突き止め、捕獲するべく深海へと向かう。しかし、捕らえられるべきは彼の方であった。
 忍び寄る怪物、それはかつて大洋を支配した肉食獣。恐竜より4000万年以上生き永らえた殺戮兵器。

 今、やつは戻ってきた…。肉と血に飢えて…。(パッケージ裏より引用)








 パッケージ裏の面積が結構な範囲をあらすじの文章に地上げされてんな!



 作品の概要としては、典型的な復讐劇にメガロドンを足したかのような本筋を持つ『シャーク・ハンター』ではあるが、実際の本編からは、凡百のパニック映画とは一味違った独自の魅力も感じる作品だ。



 というのもこのシャーク・ハンター、劇中に登場するサメが、数多のパニック映画の中でも群を抜いて本当に強いのである。



 通常のパニック映画の場合、大抵終盤では主人公が、“土壇場で火薬や電流を用いて始末する”か、“魔術書や古文書に記された弱点を見つけて封印する”か、“もう一頭の互角の能力を持つ怪物と戦わせて相殺する”などの方法で怪物を撃退するのが、作劇上一旦物語を締め括る上でも定番の結末だろう。

 しかし、この映画のサメにそのような常識は通用しない。



 本作のサメは、“10000mlの麻酔を射ち込まれても決して怯まない体力”や、“主人公達の乗る潜水艦を軽々と超える膂力”などの能力を存分に振るい、“劇中の登場人物の9割9分9厘を単騎で葬る”のみに留まらず、“主人公達がサメを殺すために立てた作戦に対して、序盤や中盤に限らず全編に渡り事実上の完封勝利を果たす”という、創作的にも規格外の怪物なのだ。



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⒞2002 SHARKHUNTER PRODUCTIONS, LLC

↑本作のサメ・『メガロドン』
妙に影が濃くサメの全身が一向にはっきりと映らないのは、メガロドン物のサメ映画に頻出する演出である。




 また、登場人物の描写にも軽く捻りが加えられており、“一見常識的に見えるが台詞の端々にサメへの復讐心を仄めかせる主人公”や、“中盤まで主人公の唯一の理解者のような態度を取っていたが、サメと直接接触した終盤では科学者としてのエゴを覗かせ周囲と対立するヒロイン”などの個性的な面子が、どこまで意図した造詣か計りかねるが、ストーリーにアクセントを効かせている。



 そしてサメ映画には珍しく、“非常に後味の悪い余韻を残す結末”なども含め、少なくとも脚本に関して言えば、これが存外長所の多い作品なのである。



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⒞2002 SHARKHUNTER PRODUCTIONS, LLC

↑潜水艦内部に侵入して人々を襲うメガロドン。
場面によってサメの縮尺が大きく異なるのは、メガロドン物のサメ映画に頻出する演出である。




 だが一方で、人の作りしサメ映画として世に生を受けた以上、当然短所も複数存在する。


 一つは、“テンポが決して良いとは言えない”ことだろうか。


 例を挙げれば、幼い頃の主人公と両親のホームビデオが流れる冒頭。
 それ自体は決して悪い演出ではないどころか、終盤の展開に掛けてラストを一層引き立てる役割まで十分に果たしているのだが、大した動きのないホームビデオを約3分、掴みから延々と流されるとなると、仮に狙った時間配分だろうがサメ映画を観るために本作を買った者としてはやはり辛い。

 また、主人公達とサメが最初に遭遇するのが、本編開始から約50分経った後というのもいささか間が空き過ぎている。
 別に序盤が退屈というわけではないが、本格的に話が動き始めるのが本編を半分以上消費した中盤以降というのも流石に焦れるので、そこは可能ならもう少しコンパクトに纏めて欲しかったところだ。
 

 もう一つは、“作風に反して悪い意味でチープ過ぎる”ことだろう。


 先に述べたように、本作は暗くハードな展開が続く、サメ映画にしては内容の重い作品だ。

 だがそこに、“好意的に観たところで陸上かせいぜい月面にしか見えない海底のセット”などを持ち出されると、どうも気分が乗り切れず、独特の良い雰囲気に水を差されたかのような印象を抱かざるを得なかった。



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⒞2002 SHARKHUNTER PRODUCTIONS, LLC

↑好意的に観たところで陸上かせいぜい月面にしか見えない海底のセット。
とは言ったものの、画像では意外と違和感を覚えないようにも思われる。




 安さや粗さもB級映画の華には違いないが、本作の場合はそのような“良い意味でネタとして笑える”要素が“良い意味でネタとして笑えない”作風と噛み合わず、むしろマイナスに働いているように感じた。
 まあB級が専門のUFOにA級の作品を求めるのも妙な話ではあるんだけどね。



 以上が本作『シャーク・ハンター』を観て、良くも悪くも特に目に付いた点である。



 色々と御託を宣ったが、本作一番の魅力はやはり“サメの圧倒的な絶望感”に尽きるだろう。

 

 近年では過剰に付与した「言っちゃなんだけど俺ェ、マジで死ぬほど強い生物だからァ」という設定上の能力と実際の劇中での活躍が釣り合わない、まるで新卒の履歴書のようなトンデモ路線のサメ映画も多い中、シンプルなパワーで凄まじい強さを見せつけてくる本作のサメは新鮮であり、「いえ、自分は行動で示しますから」という模範的社会人のごとき心意気を感じさせてくれる。



 そのため、「とにかく一騎当千のメガロドンが、人類を容赦なく粉砕するようなサメ映画が観たい」という魚類の皆様には、このシャーク・ハンターをオススメしておこう。



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コメント

非公開コメント

No title

「魚類の皆様」wと思ったけど、シャークトパスがSNSやる時代なんだから魚類だってブログ読んだりDVD見たりするわな、うん

サメが強いってなんか新鮮(錯乱)

No title

言われてみるとサメ映画でサメがガチで強いってあんま見ないな・・・

スティーブ・オルテンのMEGが作りたくて…でも版権買えなくて…まぁラストをソレっぽくしたら…みたいな感じが好印象

つーかMEGの映画化企画どうなったんでしょうね(笑)