【サメ映画】『赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター』レビュー

『赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター』

原題:THE REEF
監督:アンドリュー・トラウキ
出演:ダミアン・ウォルシー=ハウリング, ゾー・ネイラー, エイドリアン・ピカリング, ガイトン・グラントリー, キーラン・ダーシー=スミス
備考:本作の監督は『ABC・オブ・デス』の監督の内の一人でもある


reef
⒞2010 Screen Australia Screen NSW and Reef Flims Pty Ltd.

 本作は実話を基にして作られた映画、『オープン・ウォーター』を基にして作られたと思しき映画、『赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター』である。

 本作の監督は以前にも、“オープン・ウォーターのサメをワニに変えて撮ったようなバージョン”の映画『ブラック・ウォーター』という作品を製作しているが、本作は“オープン・ウォーターのサメをホオジロサメに変えて撮ったようなバージョン”の映画であるために、見方次第では、“ワニをサメに戻した分だけ一歩本家に近づくことに成功した”とも考えられる。

 と言うと、「また話題になった作品に便乗した模倣作品かよ」と思われるかもしれないが、本作の場合は少し事情が異なる。



 何故なら本作、舞台設定はともかく作品の軸は本家とまったく違っており、かつこれが案外観られる作品なのだ。



 というわけで今回は、サメ映画の中では確実に良作の部類に入る作品、『オープン・ウォーター(赤)』をレビューしていこう。



 ちなみに、パッケージや本作のあらすじには大量のサメが登場して人を襲うかのごとき文句が添えられているが、本作にサメは実質一匹しか出ない。




 あらすじ

 グレートバリアリーフ。青い空と紺碧の海。そして美しい珊瑚礁と鮮やかな熱帯魚たち。そこでのバカンスは最高のものになるはずだった…。

 滅多に人が来ない穴場でクルーズとダイビングを楽しむ5人の男女。ところが、彼らが乗った豪華ヨットが暗礁に激突して転覆してしまう。ただ待っていても救助の可能性はほとんどなく、彼らが生きのびるためには近くの島まで泳ぐしかなかった。

 だが、その海は巨大人喰いザメ、ホホジロザメの世界有数の巣窟だった…。

 ひとり、またひとり、海を鮮血に染めて貪欲なサメの餌食となる人間たち。果たして彼らは、このサメ地獄から無事生還することができるのか?



 …これは、衝撃の実話である。
(パッケージ裏のSTORYより引用)










 この監督の作品って、前作でも似た舞台設定のワニ映画で実話を主張してたけど、一体どこまで本当なんだろうね。
(追記:コメントフォ-ムでの情報提供によって、本作にもモデルと思しき実際の事件が存在することが判明致しました。実話……と呼ぶには脚色が強い作品ですが、一応本作の内容は、完全な創作というわけでもないとのことです。)



 それでは早速、本作と本家オープン・ウォーターの相違点について解説していこう。



 本家オープン・ウォーターと言えば、実際に起こった出来事を基に、“極限状態で人間が徐々に摩耗していく過程と結果”を描いた作品である。

 ここで詳細を書くとオープン・ウォーター(赤)のレビューから逸れるので割愛するが、簡単に纏めるなら“大海原という状況下での閉塞感と絶望感”を軸に据えた作品、それが本家オープン・ウォーターだ。

 本家オープン・ウォーターにもサメは登場するが、それは極限状態という舞台設定の一要素に過ぎない。
 真に登場人物を脅かすのは、サメの存在も含めた“誰の手も借りられない過酷な環境”である。





 一方で、本作が描いているのは“サメの脅威”である。

 同様に不慮の事故から大海原で漂流してしまった男女5人、厳密には4人を襲う、獰猛なホオジロザメ。

 サメと戦うことはおろか、逃げることさえ難しい海の中で殺されていく、無力な登場人物。



 “陸地や足場のような安全地帯もなく、無防備にも四六時中サメの危険に晒されたまま、いつどこで食い殺されるか分からないという状況下の緊迫感”、それがオープン・ウォーター(赤)が、本家と違う方向に据えた軸だ。



 よって本作、舞台設定こそ『オープン・ウォーター』から拝借しているものの、模倣作品とは言い難い十分な独自性と、昨今のサメ映画には珍しい純粋なサメの恐怖を兼ね備えた、立派な一本の作品だと言えるだろう。



 もちろん、映画的な出来不出来でも、本作がB級映画であるということを加味すれば十分な品質だ(「どうしてサメが特定の人間を執拗に付け狙うのか」という指摘が入れられないわけではないが、そこまで言うとサメ映画の大半は観れないのでここでは難点として挙げない)。

 ラストは若干不完全燃焼気味だが、本作も本家オープン・ウォーターと同じく実話という体裁の作品(注:本家オープン・ウォーターも内容の大半は創作である)である故に、綺麗に話を纏めるより現実味が出ている。
 本作の場合は、そこも良かったと思う。

 一応、本作の内容はパニック映画というより一種のホラー映画に近いので、登場人物やサメの派手な活躍、凄惨なスプラッター演出などを求めて観ると、「何か思っていたのと違う」「単調な内容」「地味な作品」という感想を抱かれるかもしれないが、逆にシチュエーション・ホラーとして観れば、久しく目に掛かれなかった“真面目な方向性のサメ映画”を存分に味わえるだろう。

 深いテーマや凝ったストーリーといったものもないが、登場人物に感情移入しつつ、劇中の常に張り詰めた雰囲気を共有すれば、基本的には淡々とした展開すら、気の抜けないものとなるはずだ。

 本作も本家同様、万人に受ける種類の作品ではないと思うが、それでも“奇を衒わず正面からサメの恐怖を見せてくれる作品”として、サメ映画の中では割と上の方に位置する作品であると、私は考えている。



 以上、結論として再度繰り返すが、オープン・ウォーター(赤)はサメ映画には貴重な、比較的良作の部類に属する作品である。



 もっとも、上記の結論もまた個人の感想に過ぎないが、「たまには初代ジョーズ以外の作品でストレートに怖いサメ映画を観たい」という方々には一度試して頂きたい作品だ。

 少なくとも、本家を知った上で「所詮オープン・ウォーターの模倣作品だろ?」と侮った姿勢のまま観ると、意外と別物な出来に唸らされる作品であることは保証したい。

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コメント

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No title

画像が一つもないなんて珍しい。

どうやら実話?

一応、ブラック・ウォーターと赤い珊瑚礁もモデルになった事件はあるようです

☆2003年オーストラリア北部ワニ襲撃事件
ブラック・ウォーターのモデルになった事件
三人の若者(全員男性)が川でワニに襲われ一人が死亡、他の二人は木の上で22時間過ごした後生還した
http://www.theguardian.com/world/2003/dec/24/australia.davidfickling
http://www.theguardian.com/lifeandstyle/2008/jan/19/weekend.barbaramcmahon

☆1983年オーストラリア近海漁船転覆事故
赤い珊瑚礁のモデルになった事件
三人を乗せた漁船が荒波で転覆、二人がサメに食べられる
転覆の36時間後、船長だけが救出された
http://www.couriermail.com.au/archive/entertainment/film-reopens-painful-memories-for-shark-attack-victim/story-e6freqex-1226020395592
http://www.answers.com/article/949879/ray-boundy-and-the-true-story-behind-the-reef

まあ、かなり脚色されているようですが

No title

情報提供ありがとうございます!
事前調査不足でしたね……
後でレビュー記事に加筆修正させて頂きます!

No title

最初、レッドウォーター・鮫地獄のレビューかと思いました。
あれは普通に見られる内容だった……かなぁ。

No title

私は『レッド・ウォーター サメ地獄』も好きですよ!
尻上がりに面白くなっていく作品でしたね

やっぱクソ映画が好きなんですね~
死中に活を求めるスタンス

No title

怒涛のサメ映画レビューありがとうございます!
絶好調のUSJも15周年記念にサメアトラクション改装してほしいな~w