【サメ映画】『トリプルヘッド・ジョーズ』レビュー

 力と技の映写が回る
『トリプルヘッド・ジョーズ』

原題:3 HEADED SHARK ATTACK
監督:クリストファー・レイ
出演:カルーシェ・トラン, ダニー・トレホ, ジェイソン・シモンズ, ロブ・ヴァン・ダム, ジェナ・シムズ
備考:ダニー・トレホは死ぬ


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⒞ 2015 TIKI TERRORS, LLC.

 “二つの頭を持つサメ映画”こと『ダブルヘッド・ジョーズ』から3年、ついに複頭系サメ映画に待望の最新作が現れた。

 ダブルヘッド・ジョーズにおいて、“頭と頭の隙間が安置”という致命的な欠陥が露見した複頭系サメ映画であったが、昨年リリースされたこの映画では、前作の反省を活かしつつ、“隙間にもう一つ頭を増やすことでスペースを詰め安置を消滅させる”という画期的な発想によって弱点を克服している。

 更に本作、頭の数を三つに増やしたことにより、最大三人までの同時捕食も可能、それに伴い劇中には“モブキャラが三人揃うとサメに食われて全員消える対戦パズル”のごとき要素も加わり、結果パニック映画界にまた一段と新しい可能性が生まれたのである。



 以上、サメ映画と言う名の冥府に佇む、Z級神話のケルベロスこそ、この『トリプルヘッド・ジョーズ』なのだ。



 頭の数より質はどうにかならなかったんですか!



※今回はレビューの都合上、普段より細かい内容にまで触れているので、未見の方々はネタバレにご注意願います




 あらすじ

 水深800Mに位置する海底の研究施設。そこでは、産業廃棄物による汚染の影響で、 生物の突然変異体が多く発見されていた。

 科学の発達が引き起こした、歪んだ生態系。人類は、自らの手によって悪魔を生み出したのだ―。

 一大ジャンルと化した“サメ・ジャンル”に新たなトンデモ作が誕生! 米アサイラム社製作&ダニー・トレホほか、個性派俳優陣で贈る、前代未聞のモンスター・パニック!!。(公式HPより引用)










 本作『トリプルヘッド・ジョーズ』は前作『ダブルヘッド・ジョーズ』との関連性を持たない、完全に独立した一本のサメ映画である。

 そのため前作にあった“二つ頭のサメは電流に強く引き寄せられる”、“様々な能力が通常のサメより頭の数だけ倍”という設定は引き継いでおらず、代わって“三つ頭のサメは汚染された海域を好む”“ゴミを食べることでパワーを付ける”、そして“驚異的な再生能力”という、頭の数の増減とは特に関係のない設定を付与されている。



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⒞ 2015 TIKI TERRORS, LLC.

↑ゴミを好んで食べるトリプルヘッド・ジョーズ。
これはおそらくゴミを好んで借りるサメ映画ファンのメタファーだ。




 もちろん本作も前作同様、三つ頭という特性を上手に活かした活躍は、劇中これといって披露されることもなく、せいぜい“やたら数の多いモブキャラを三人一斉に処分する”演出の他には何も見られないが、それでも“巨大なサメが地を這い、空を飛び、人々に食らい付いていく”絵面のインパクトは十分に強烈であり、前作と比べて捕食シーンの迫力も格段に上がっているため、むしろ数点でも三つ頭という特性を活かした場面があるという事実を逆に評価するべきだろう。



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⒞ 2015 TIKI TERRORS, LLC.

↑当然のように地上への適性も手に入れているトリプルヘッド・ジョーズ。
現代社会に生きるサメはグローバルな環境で活躍することを求められているのだ。




 また、三つ頭の特性を活かした場面こそ少ないものの、全編通してサメが万遍なく登場しつつ、海上施設を破壊したり、客船を襲撃したり、初代ジョーズの終盤を彷彿とさせる演出で本編を盛り上げてくれるため、見所自体は大漁だ。
 トンデモ路線を強引に突き進んだ展開のみならず、純粋に観ていて画の映えるカットも多く、サメの捕食シーンでの瞬間最大風速という点では、質も量も前作を超えているように感じた。



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⒞ 2015 TIKI TERRORS, LLC.

↑初代ジョーズのごとく斜面に陣取り人々を食い殺すトリプルヘッド・ジョーズ。
余談だが、本作の舞台は前作や『ゴースト・シャーク』などのサメ映画と同じ撮影現場であることや、海上施設という『ディープ・ブルー』のオマージュが強い設定(本作のラストの台詞などは完全にディープ・ブルーそのまま)であることから、上記の場面の効果も含め、鑑賞中は始終既視感が付き纏ってきた。






 以上のことから、サメの出番と活躍、そしてトンデモ具合に関して言えば、本作は申し分ないだろう。





 それでは他の点は一体どうなのだろうか。





 本作の序盤は割合丁寧な構成だ。 

 冒頭から適度にサメの捕食シーンを見せつつ、舞台の解説や登場人物の紹介も、簡潔かつ流れるように済ませ、そこから早々に“三つ頭のサメに襲われた主人公一同が海上研究施設から脱出を試みる”という定番の展開に移る。

 途中、サメの大きさが場面ごとに変わったり、水位の深さが場面ごとに変わったりというサメ映画特有の粗は本作でも顔を覗かせているが、それは序盤に限って言えば、本作の面白味を損なうほどの短所でもなかったため、そこもまた愛嬌として受け止められた。





 だが、中盤以降、視点が主人公一同から別の客船で騒ぐ若者に飛んでからというもの、序盤の勢いは若干失速する。

 というのも話が主人公とまったく関係のない一般人に視点が移り、そこで別の船上での騒動がひたすら尺を稼ぐかのように続くため、少々内容に飽きてくるのだ。

 また、そこで主人公一同と合流した一見準主人公のような少年少女の二人も、本編で一切に役に立つことなく最後には普通にサメに食われて死ぬため、鑑賞後には「無駄に長かったけど中盤要らなかっただろ! 結局いつものアサイラム作品かよ!」と落胆するところはあった。







 同時に、微妙に冗長な中盤に引き続き、終盤では各所において、「これは本当に商業作品なのか?」と目を疑うようなミスが頻出するのも問題だ。





 本作を未見の方々にも分かるように、いくつか簡単な解説を加えると、終盤のサメとの戦闘シーンにおいて、



1.ダニー・トレホがサメの三つ頭の内、中央の頭をマチェーテで切り落とす

2.二つ頭となったサメが反撃、ダニー・トレホを殺す

3.他の登場人物は慌てて逃げる

4.一旦逃げ延びた後、何故かここで他の登場人物が「見たか? サメの頭を切り落としても、傷口から別の頭が生えてくる!」という旨の台詞を言う(この時点で劇中サメの頭が生えてきた描写はない)

5.↑の台詞を言い放った後から、サメの頭が傷口より生えてくる




という、突然登場人物が未来予知の能力を身に付けたと解釈しなければ脚本上の整合性が取れない編集ミスなどはまだ軽い方で、







1.登場人物の一人がサメに片腕を食われる(本編では千切られた傷痕の断面まで見える)


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⒞ 2015 TIKI TERRORS, LLC.


2.直後、何故か両腕になって海に落ちる


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⒞ 2015 TIKI TERRORS, LLC.


3.それどころか両腕で余裕のクロールを始める


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⒞ 2015 TIKI TERRORS, LLC.





という、これはもう撮影ミスとか以前に色々と無残としか言えない難点が、続々と我々視聴者を攻め立てるのである。





 もちろんサメ映画、ましてやアサイラム作品においては、多少の難点もまた魅力として受け入れるのが恒例ではあるが、本作の場合、“なまじ前半の出来が良かった分、中盤以降とのギャップに苦しめられたこと”や、“ゆえに酷さを笑うというより、それまでの良さに水を差されたという心境に陥ったこと”、そしてここが一番大事なのだが、“単純娯楽作品として多少の難点を気に留める余裕を与えないほどの勢いが、本作の中盤以降には少なかったこと”から、初見時の私は個人的には終盤の展開に乗り切れなかった。
※なお、今回のレビューのため改めて観た際には、本作がどういう作品が理解しつつ受け入れる余裕が完成されていたため、無事楽しい一時を過ごすことに成功した





 というわけで脚本に関して言えば、“二つ頭のサメから生き延びようとする主人公一同”一本に分かりやすく纏められていた前作の方が、単純明快かつ終盤まで勢いを保っていたため、私は本作より気に入っているが、総合的な出来不出来では一長一短といったところだろうか。





 さて、以上を踏まえた上での総評だが、本作は良くも悪くも“割と観れる部類のサメ映画”だとは思う。





 映画としての出来は決して褒められたものではないが、サメ映画としての出来は捻くれた意味で完璧とも言えるため、本作もまた事前にどのような作品か内容を把握しておいた上で鑑賞に臨めば、「うーん、まあ、意外と観れるな」という比較的肯定的な感想を抱ける作品ではあるだろう。

 少なくとも観るに堪えないほど酷いとまで行く作品ではないため、もし財布に余裕があれば、他に例を観ない三つ頭のサメの活躍を、本作でじっくりと堪能するのも乙だろう。

 あえて本作より先にダブルヘッド・ジョーズを観ておいて、ここ数年で飛躍的に向上したアサイラムの映像技術に驚くというのも良いかもしれない。



 とにかく、サメ映画にしては及第点前後の作品であることは確実であるため、ぜひ一度、真面目に不真面目な姿勢でもって鑑賞しておくことをオススメする。





 ちなみにこのトリプルヘッド・ジョーズ、ソフトが国内で流通するより前に、ニコニコ動画における新作サメ映画日本国内最速上映企画にて、かの傑作『シャークネード エクストリームミッション』の次に先行放送されていたのだが、当時は「シャークネードが例外なだけでいつものアサイラム作品はこんなモンだよ」何故か本作を慰める声が多数上がっていた。



 私も完全に同意する。発売がアルバトロスだったしね。



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コメント

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レビューを読んで、なかなか(サメ映画基準で)面白そうな作品だと思いました。
これを機に未見の前作と合わせて観てみようと思います。

ダニー・トレホはスパイキッズのおじさんのイメージだったから血まみれになってるのを見てると何か悲しくなるなあ(続けてマチェーテを観ながら)

No title

>>これはおそらくゴミを好んで借りるサメ映画ファンのメタファー
自虐すんなよw
……いや、実際普通に良い映画も見てらっしゃるようですが
辛くないんスかね?実際

なんか海中のゴミ食ってる画像でゴミからワイヤーみたいのが伸びてるような……気のせいか?

No title

すみません、頭5つ形態がマジで生理的に無理です。

ダニートレホ

最近良く見かけますよね。
古くからのファンとしては嬉しいんだけど、マチチェーテ以外は相変わらずヒドい役ばかり…。

ゾンビハンターの時も、もうちょい活躍して欲しかった。

シャークネードも続編作ってるみたいだし、まだ当分はサメ祭りですかね。シャークプリズンがちょっと気になってるんだけど、どうなんでしょう。

No title

次回作は前後左右に頭のある「四面楚歌対策済みサメ」でお願いします!アサイラムさん!

シャークネードエクストリームミッションのパッケージに主役の彼(彼女?)が友情出演してるの。有名な話かな?

船の橋?から斧持って飛び降りるシーンが良かった。

No title

あれ?落とされた頭の切り口にヒュドラみたいに沢山の頭がわいてるカットありませんでしたっけ?
セリフのあとだったかちょっと思い出せないですが…


あと個人的に面白かったのが、エサとなるゴミを集めて
「これだけあれば大丈夫だ!」

(この間ポイポイ投げ込むので、足りるのかよと思ったら)

数十秒後
「どうしようゴミが全部なくなった!!」

ΩΩΩ<せやな!!!
使える教授の死体がなかったのが残念です

対戦パズルの例えで腹筋持っていかれた