【ホラー映画】『ストレージ24』レビュー

 「くっ」
『ストレージ24』

原題:STORAGE24
監督:ヨハネス・ロバーツ
出演:ノエル・クラーク, コリン・オドナヒュー, アントニア・キャンベル=ヒューズ, ローラ・ハドック
備考:ノエル・クラークは『スタートレック イントゥ・ダークネス』や『ゾンビハーレム』にも出演


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⒞Medient Unstoppable Limited 2012



 というわけで本作があの有名な『ストレージ24』、あの公開当時アメリカでの興行収入が僅か72ドルという記録的な数字を達成したことで一躍名を馳せた『ストレージ24』である。



 もっとも、本作の成績が死ぬほど振るわなかった理由には“全米で一館しか本作を流していなかった”ことや、“上映期間が一週間しか取れなかった”ことなどの要因を含み、加えて“元々低予算の作品であり高収益は期待されていなかった”という、最初から劇場で勝負するには荷が重いB級映画として制作されていたという事情も孕んでいるため、単純に本作を“駄作なので売れなかった”と判断するのは少々安直な発想だ。



 かといって、本作が実は隠れた良作なのかというとそこは非常に怪しいが、とにかく本作があの僅か72ドルの興収で有名な『ストレージ24』である。




 あらすじ

 ロンドン市街にて軍用貨物機が落下。輸送中の“積み荷”がぶち撒けられた。

 未曾有の混乱状態に陥った街を抜け、巨大な貸し金庫【ストレージ24】を訪れていたチャーリーとマークは、警備システムの故障により倉庫内に閉じ込められてしまう。

 彼らは同じように閉じ込められてしまった人々と、何とか脱出を試みようと、迷路のような倉庫で出口を求めてさまよい始めるが、事態は一向に好転しない。

 すると突如、人間ではない“何か”の襲撃を受け、1人また1人と無残に命を奪われていく…(パッケージ裏のSTORYより引用)








 さて、本作の内容はパッケージ裏でも謳われている通り、“特定の空間に閉じ込められた人々が、正体不明の怪物に次々と殺されていく”という、今回もまたホラー映画における定番の展開を軸に据えた作品である。

 その内容に王道以上の新鮮味はなく、この手の作品を数本も観ていれば先が読めるような平凡な展開が最初から最後まで続くため、良くも悪くも脚本は評価に困るところがあるものの、他の点では少なからず見所も持つ作品だ。

 例えば、怪物の殺人シーンにおける、“逃げ場を失った犠牲者の目と怪物によって破壊されていく扉を交互に映す細かいカット割り”や、音楽と照明を活かした演出、そして真に迫った役者の演技などには、古典的ながら思わず引き込まれる部分も多かった。
 そのため、本作に対する印象は必ずしも悪いものに限らず、むしろ各所で見受けられる試行錯誤の痕跡には良いものを抱いたのである。



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⒞Medient Unstoppable Limited 2012

↑本作に登場する怪物。
画像では質感こそチープなものの、実際の映像では口から伸びる牙などの細かい点が良く動くため、意外と観られる出来である。






 また、本作の長所として、主要人物である二人組、チャーリーとマークに関する“裏表のある人物描写”が挙げられる。

 序盤のチャーリーは“沸点が低く視野の狭いバカ”、マークは“前後不覚に陥りやすいチャーリーを窘めつつ、的確な意見で場を収める冷静な相棒”という風に描かれており、冒頭から準主人公であるマークの方に感情移入してしまいかねないほど情けない様を晒し続ける主人公のチャーリーであるが、中盤の例の出来事以降、そのような二人の立場が一気に逆転していくのが面白い。

 特に終盤、チャーリーが“情に厚く行動力と統率力に優れた男”という良い一面を見せていくのに対して、マークは“平時ではバカなチャーリーを利用して自分をクールに見せていただけの自分本位な薄い男”という素顔を暴かれていく後半は、本作のシンプルな筋書に複雑な人間模様という捻りが加えられているように感じた。





 とはいえ、上記の二人組を除く他のキャラクターには別に人物描写に凝った様子もなく、ヒロインなどは一貫して“自分の浮気が原因で一方的に主人公と破局しておきながら何故か自身を棚に上げて相手を責める嫌な女”に過ぎなかったのが少々残念といえば残念だが、逆にそこまで尺を取って詰めると「それもうホラーじゃなくてヒューマンドラマでいいんじゃないかな」と作品を根本的に覆しかねないので、この程度の塩梅に留めておくのも無難といえば無難なのかもしれない(一応、この手のホラー映画には得てして性格の悪いヒロインが付き物なので、そこも様式美として受け止められないこともない)。





 そして、本作における突出した見所とは、やはりクライマックスで颯爽と怪物の前に姿を現した犬爆弾だろう。



 未知の怪物の前に成す術を持たず、一人また一人と死んでいく主人公一行が、最後にして最大の切り札として相手に差し向けた即席の殺戮兵器、それが犬爆弾(注:倉庫の奥に置いてあった仔犬の玩具)なのだ。



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⒞Medient Unstoppable Limited 2012



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⒞Medient Unstoppable Limited 2012









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⒞Medient Unstoppable Limited 2012









 燃え盛る小さな犬の人形が、これほど輝いている作品を私は他に知らない。









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⒞Medient Unstoppable Limited 2012

↑決死の特攻によって地下の闇に散る犬爆弾。
彼の安価な玩具の体に、高潔な命と男の生き様を見たB級映画ファンは多いと聞く。








 というわけで世界で一番クールな犬爆弾を拝むことの出来る希有なB級映画、『ストレージ24』であるが、低予算の宿命か冒頭から続く痴話喧嘩が若干冗長なため、怪物の本格的な出番も後半まで待たなければならないことや、犬爆弾を除けば分かりやすい見所も極端に少ないことから、全体的には佳作の域を出ないような作品だと、個人的に感じている。

 だがそれはまったく駄目な作品であるということを意味するものではなく、“出来る工夫は凝らしてみたが、やはり諸々の制約の都合で地味な出来に仕上がってしまった”ような節も窺える作品であるため(注:これはあくまで私の感じた印象であり実際のところは不明)、本作を評価するのにクソ映画という表現を用いるのは適切でないように思われる。



 とにかくこのストレージ24、結果は僅か72ドルに終わってしまった作品ではあるが、逆にその数字によって話題を呼び、大勢のB級映画ファンの目に留まり、何時の日か再びその出来を評価されることに期待したい。



 でも無理だろうなあー。




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コメント

非公開コメント

これほど犬の作り物感が露骨な作品も珍しいな………珍しくない?

正直怪物よりも、シリアルキラーが宅配で送ってきそうなデザインした犬爆弾の方が、照明の加減も相まって怖い。

No title

犬は生きてるという設定なのか
それともぬいぐるみとして出てくるのか

No title

もちろん劇中でも見たままぬいぐるみという設定です

No title

之って製作費はいくらくらいだったんでしょうね。当然72ドル以上なのは確定ですけど。

No title

犬爆弾、可愛すぎワロタ

No title

カメラアングルがひどくて目が疲れた・・・

しょっぱなから千早ディスってて草