【ホラー映画】『アナベル』レビュー

 SAWの脚本家が製作総指揮だった場合の『トイ・ストーリー』
『アナベル 死霊館の人形』

原題:Annabelle
監督:ジョン・R・レオネッティ
出演:アナベル・ウォーリス, ウォード・ホートン, アルフレ・ウッダード
備考:Amazonで『“アナベル 映画”』と検索すると『もしかして:“アナル 映画”』と表示するのは止めろ


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(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 SAWシリーズの脚本として名を馳せた男、ジェームズ・ワンが監督を務めたホラー映画、『死霊館』(2013)
 その前日譚であり、一体の呪われた人形に関する怪奇現象を描いたのが本作、『アナベル 死霊館の人形』(2014)だ。


 本作に登場するアナベルという人形は実在しており、劇中でも名前の登場する超常現象研究家・ウォーレン夫妻の博物館に、厳重に保管されている。
 そしてまた本作も、実話を基に作られた作品であるということだ。


 実際のアナベルはアメリカの国民的キャラクターであるラガディ・アンの人形なのだが、本作のアナベルはトイザらスの店頭に並ぶ可能性をゼロから小数点以下まで切り捨てた強烈な造形でその身を彩っている。


 可愛い……。




 あらすじ

 ジョン・フォームは、わが子の誕生を控えた妻のミアに、ビンテージ人形をプレゼントする。

 だが、幸せに満ちた日々は、思わぬ事件で打ち砕かれる。隣家の夫婦を惨殺したカルト信者の男女が、ミアに襲い掛かったのだ。
 男は警官に射殺され、女はミアの人形を抱いて自殺する。
 その日を境に次々と奇妙な出来事が起こり、原因不明の火事に発展する。幸いにも無事に救出されたミアは女の子を出産し、家族は血塗られた家を出る。

 ところが──引っ越しの荷物から捨てたはずの人形が現れる。実は男女が絶命の瞬間に邪悪な何かを呼び出していたのだ。
 果たして、人形に宿った怨念の正体とは、そしてその目的は──?

 フォーム夫妻には、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のアナベル・ウォーリスと、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のウォード・ホートン。『死霊館』のスタッフが再び集結し、音と映像で観る者を犯す未知なる恐怖の扉を開ける──!(公式ホームページより引用)



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(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

↑本作のアナベル人形。
ホラー映画の人形と言えば『チャイルド・プレイ』のチャッキーが有名だが、チャッキーが獲物を直接始末する武闘派であるのに対して、
アナベルはあくまで超常現象によって相手を追い込み、自身は動く姿をほとんど人目に晒さない知能派という点で大きく戦法が異なる。








 本作『アナベル 死霊館の人形』は至ってスタンダードなスタイルのホラー映画だ。

 つまり、



 不気味な雰囲気を作り、絶妙な間を取り、突然の恐怖演出。
 不気味な雰囲気を作り、絶妙な間を取り、突然の恐怖演出。
 たまにフェイント。
 不気味な雰囲気を作り、絶妙な間を取り……。




 という、もはや完成されたホラー映画の文法に沿って、本作の話は進んでいく。

 そのため上記のパターンに慣れている方からは、この映画に対して「少し驚いたが、怖くない」という声が上がるかもしれない。



 だが“主人公夫妻の子がトラックに轢かれていく様子を描いた落書きが一枚ずつ階段の上から落ちてくる”シーンや、“奥の部屋から走ってきた幼女が不意に凄まじい形相の幽霊と化す(別のホラー映画『ザ・ショック』のオマージュ)”シーンなど、「怖さを感じなくとも良さに唸らされる」ような、秀逸な演出も多い。



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(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

↑アナベルの描いた落書き。
悪魔的な画力に編集部も騒然だ。




 また、アナベルの地味に突出した長所として、“さほどストレスを感じず楽しめるホラー映画として作られている”点が挙げられるだろう。

 例えば、この類のホラー映画には“登場人物が『幽霊の存在を見て、聞いて、信じる派』『寝言は寝て言え派』二大チームに別れて延々と揉め続けることにより、肝心の本編が一向に進まず、酷い場合には幽霊の存在すら蚊帳の外”というケースが頻繁に見受けられる。



 本作にも、『怪奇現象を直接体験した妻』『怪奇現象には半信半疑な夫』が登場するが、この映画の場合“あくまで夫は妻の味方であり、半信半疑ながら怪奇現象と戦う妻へのフォローを続けていく”ことで、内輪揉めは最低限に留め、視聴者が本筋一本に集中することの出来るような配慮が為されているのだ。



 また、多少の流血表現はあるものの、派手なゴア描写というほどの演出もなく、血糊が苦手なホラー映画ファンにもオススメ可能な作品でもある。

 と言うと、「オーソドックスなホラー映画の構成を取っておいて血飛沫の降り注がない作品とは本当に大丈夫なのか」と懸念されるかもしれないが、そこは前述の通り演出で補われているため、出来具合に関して言えば本当に大丈夫だ。



 他にも、序盤からクライマックス気味のホラー演出を繰り出しておきながら、溜めるところは溜め、出すべきところで出す作品のテンポに、そして終盤アパートの室内を完全に支配したアナベル人形の大活躍、ホラー映画というジャンルから逸脱しない範疇において入念に描写される家族愛・親子愛などは、観ていて逆に気味が良いほどに仕上がっている。



 そう考えると大変観やすい内容に調整されている本作は、驚きと楽しさ、そして少々の怖さを詰め込んだ大人用ホーンテッド・マンションに臨むような姿勢で観るのがベストなのかもしれない。

 もちろん、この手の作品を普段観ないという方には普通に怖いホラー映画として普通に楽しめると思われる。



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(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

↑終盤のアナベル人形。
よく見ると彼女の背後に悪魔が潜んでいる。
別にスタンド攻撃を受けているわけではない。




 難を挙げるなら、ラストの展開で多少引っ掛かったという程度だろうか。



 目の前で友人が自殺した直後であるにも拘わらず、悲壮感も適当に打ち切り「でも俺達は悪魔の恐怖に打ち勝ったぜ! 良かったぜ!」と一転して幸福感を全開に喜び合う主人公夫妻と子には「うん?」と首を傾げたくなる部分がないわけではなかったが、その程度なら別に作品自体を否定するほどの短所でもないだろう。





 とにかく、アナベルは「ホラー映画を観たい」と思う者に、癖の少なく取っ付きやすいホラー映画を見せてくれる良作だ。

 一応この映画は『死霊館』のスピンオフ作品ではあるが、前作を観ていなくとも支障なく単品で観れる内容に作られているため、先に本作から入ろうが不都合は見当たらないだろう。

 実話を基に作られた作品という呈でありながら、サイドストーリーを知らなければ話が分からないということもなく、アナベル人形の凄惨な笑顔に反して、色々と親切な面の目立つ作品である。


 非常に配慮の行き届いたホラー映画と言うのも妙だが、それがアナベルの魅力でもあるのだ。


(注:これは普段意味不明なホラー映画ばかり鑑賞している人間の感想です)

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コメント

非公開コメント

No title

中盤までは不気味な雰囲気でホラー映画として見れていたのに、普通に見えちゃってるデーモンさん、ギャグ漫画ばりに吹き飛ぶ神父で爆笑したところからホラーに見れなくなったしまった

No title

神父は一体どんな怖い目に遭うのかな……と溜めて溜めてピークに達したところでアレは完全に不意を突かれました

秀作もいいけど・・・

ぶっ飛んだクソ映画をレビューしてくれよ!おいらみたいな一般人はここからぐらいしかクソ映画成分を摂取できないんだよ!

No title

フレディVSジェイソンレベルのホラーでギブなのですが、もしかすると、これなら観れそうかな…?

No title

人形の怖さはわりとアリなんだがなぁ・・・

チャッキーを武闘派と表現するの、地味にハットマンさんが初めてな気がする

いやチャッキーはガチで武闘派だぞ。
ドラゴンやゴーレムに凶器1本で挑んでいく時点で(モンスターファーム脳)。

No title

続編の公開が始まったからかサタシネで死霊館が放送されましたね。

あんだけ脅かしながらも
赤ん坊は無傷で返す
悪魔の鑑