【POV映画】『死霊高校』レビュー

 ※死霊映像
『死霊高校』

原題:THE GALLOWS
監督:クリス・ロフィング/トラビス・クラフ
出演:リース・ミシュラー, ファイファー・ブラウン, ライアン・シューズ, キャシディ・ギフォード
備考:本作のキャストの名前と登場人物の名前はそれぞれまったく同一


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⒞2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

「『パラノーマル・アクティビティ』のスタッフが結集して作り上げた新作!」という、本当に期待していいのかどうかイマイチ判断に迷う宣伝文句によって売り出されたのが本作、『死霊高校』だ。

 パラノーマル・アクティビティでは毛布やドアがちょっと動くことを『恐怖』として商業ルートに乗せた彼等であったが、本作はきちんと肉体のある怪物が若者を惨殺していく、正統派のホラー映画として仕上がっている。



 うん、怪物は出番を全部合計して十何秒か出るよ。『Five Nights at Freddy's』 みたいな感じで。

 と言いますが私は本作の内容は割と良かったと思います。





 あらすじ

 時は遡ること1993年。ビアトリス高校の演劇部の舞台上にて、ハングマンをテーマにした演劇『THE GALLOWS』が行われていた。
 その主役に急遽代役として抜擢された男子生徒・チャーリーは、不慮の事故により、クライマックスにおいて本当に絞首台で首を吊られて死んでしまう。



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⒞2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

↑冒頭から、演劇部の舞台上。
この学校の演劇部はセット制作に対する力の入れ方が絞首台ピンポイント過ぎないか。



 そして月日は流れ約20年後。演劇部では再び、あの『THE GALLOWS』を行うことになる。演劇部のヒロイン・ファイファーの誘いを受けた本作の主人公・リースは、アメフト部であるにもかかわらず、彼女に惹かれていたこともあって舞台への主演を承諾。同じアメフト部の悪友・ライアンに笑われつつ、日々稽古に励むのであった。

 だが一行に演技の上達しないリースを見かねたライアンは、夜中にステージに忍び込み、セットを壊して強引に演劇を中止しようと持ちかける。

 渋々ながら結局はその提案に乗ったリースは、ライアンと彼の彼女・キャシディと共に、“校内で唯一鍵の壊れた扉”を通って深夜の学校に侵入。
 意気揚々と絞首台のセットを破壊する彼等であったが、そこに偶然リースの車を見つけたというファイファーが姿を現すのであった。


 紆余曲折の末、計画の一部始終をファイファーに知られてしまい、愕然とするリースとライアン。
 しかし、どうしたことか来るときに使った扉は開かず、校内から外に出られない。
 そして、彼等が壊したはずのセットは、少し目を離した隙に何故か元に戻っている。


 困惑する四人を待ち受けていたものは、遭遇した人間を“絞首台で処刑する”舞台裏の悪霊と化したチャーリーなのであった―


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⒞2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

↑画面中央の男性が生前のチャーリー。
ピンボケしたえなりかずきではない。






 いかにもB級映画といった邦題に反して、本作は(ラスト付近を除けば)意外にも丁寧な出来の作品だ。

 例えば、仮に出来の悪いPOV映画の場合、「お前心身共に極限状態の割にカメラだけは意地でも手放さねえよな」と言いたくなるほどに主観ショットを保持するパーフェクト視点キーパーが目に付くものだ。

 しかし本作では、“登場人物が常にカメラを持っていなければならない理由”を(ラスト付近まで)場面に応じ、それぞれ理由を付けて自然に描いており、この類のPOV映画のウリモノとも言える“現実感”に水を差す要素が少なかったことが長所に挙げられる。


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⒞2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

↑本作を象徴する絞首台の縄。
別名『殺人チュロス』



 またPOV映画というジャンルに多い難点の一つとして“序盤の導入部分が近所のオバチャンの世間話よりタルい”という特徴がある。

 それに関して言えば本作も例外ではなく、“見所のない日常の描写も現実感の演出”という面を差し引いてなお少々尺が長く感じたが、この映画ではそこに紛れて後半の展開のためのネタフリを用意周到にも仕込んでいるため、鑑賞後の印象は決して悪いものではなかった。

 特に、“前半で一向に演技の上達しない主人公・リースに投げられた「感情を込めろ」という指導のネタフリが終盤になって活き、かつそこからヒロイン・ファイファーがそれまで視聴者にも登場人物にも隠していた異常性を滲ませてくる”例のクライマックスには思わず舌を巻いたものだ。



 もう一つ、POV映画の難点には「怪物が全然画面に映らねえじゃねえか! このカメラの素人め!」という特徴があり、これもまた本作も同様の問題を抱えている。

 何せ本作の怪物・チャーリーの姿が劇中画面に映る時間は、彼の影を除き僅か十数秒という、深刻な対人恐怖症を勘繰りたくなるほどに出番が少ないのだ(スラッシャー映画の殺人鬼みたいなデザインの癖に終盤でも全然出ねえんだもんよ)。


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⒞2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

↑本作の怪物・チャーリーのシルエット。
彼は絶対同窓会に呼ばれないタイプの殺人鬼だ。



 と言うと、本作はサメ映画メソッド※1に則った駄作のようにも聞こえるかもしれないが、この映画では二台のカメラを用いた不気味な雰囲気の作り方と、間の取り方が絶妙であるため、怪物そのものの姿が見えなくともそれはそれで充分楽しんで観ることの出来る作品であった。

※1「サメ映画なのにサメが出ないよ」の意。転じて『クソ映画』の意。



 とはいえラスト付近での「いや皆、呑気にダベってないで逃げようよ! チャーリーすぐそこまで来てるよ!」と焦れる場面や、視点を主人公一同から突然現れた警官隊に切り替えつつ迎えた「俺達の怪異はこれからも続くぜ!」という結末などは本作の完成度を落としているようにも思えたが、その程度の難点ならホラー映画の愛嬌ないし魅力として受け入れられる許容範囲のものであろう(追記:本作のオチから考察すれば、上記の二点に理由を付けられないわけではないことも、好印象の要因である)。


 かつ本作で推定最も怖いシーンである“ヒロイン親子による無言のカメラ目線”が、その一見蛇足気味だが「なるほど!」と納得も出来るラストで待ち構えているため、個人的にはクライマックス以降の展開も、短所として挙げるには至らなかった(というよりここも長所だ)。



 そのような本作の総評は、「POV映画ファンには秀作、ホラー映画ファンには良作、二者に当て嵌まらない方にも普通の映画として十分観れる可能性が高い」作品だろうか(もちろんこれは個人の感想であり、「仮に私がこの映画を他人に薦める場合に下した評価」である)。

 派手なゴア描写や怪物の活躍のような要素はなく、純粋な怖さという面では他の映画に劣るかもしれないが、全編通して漂う気味の悪さ・一部の細かな出来の良さを楽しむならば、むしろ鑑賞後の印象の良いB級映画であった。





 ところで、本作において大事な要素である『舞台』『演劇』『絞首刑』『縄』『ハングマン』などに属するワードが、この映画の邦題にまったく反映されていないのはどうなのか。

 この映画で一番吊り上がったのは杜撰な邦題に向けられた客の目なのかもしれない。


 当ブログ的にはオチが付けられて良かった。
 

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コメント

非公開コメント

No title

そうぞうしてたのとだいぶちがかったそれだけ

No title

ゴア描写苦手だから丁度いいかな。

No title

はじめまして。
いつも楽しく拝見させていただいております……

早速ですが知的風ハット様に是非紹介していただきたい映画があります……「クン・パオ!燃えよ鉄拳」という、物凄く金を使い監督がやりたいことをヤリ逃げしたクソ映画です……たくさんの見所がある凄い映画なので是非一度見ていただきたいのです……

どうかご検討下さいm(__)m
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