【パニック映画】『メガ・スパイダー』レビュー

 んもーアメリカ合衆国はすぐ身近な生物をメガにするー
『メガ・スパイダー』

原題:Big Ass Spider!
監督:マイク・メンデス
出演:グレッグ・グランバーグ, リン・シェイ, パトリック・ボーショー, レイ・ワイズ, クレア・クレイマー
備考:本作にはロイド・カウフマン(悪魔の毒々モンスターの人)がカメオ出演している


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(C) 2012 Epic Pictures Group, Inc.

 原題を直訳すると、『デカケツグモ!』だろうか。
 映画業界という超個体から排泄された、創作的塗糞のごとき惨状を示す『パニック映画』というジャンルの作品には相応しい題名なのかもしれない。

 だが、私はこの映画には、多少安直だろうとも無難なタイトルを付けて欲しかった。



 だってこの映画、結構面白いんだもの。




 あらすじ

 お人好しの害虫駆除業者・アレックスは、虫に刺された腕を治療する為、病院を訪れていた。
 そこで彼は遺体安置室に潜む毒グモの駆除を、治療代を無しにする条件で引き受ける。

警備員のホセの協力を得て、安置室から通気口に潜入した彼は、異常に粘着力の強いクモの巣を発見、 更に奥に進んだ彼は病院の地下へとたどり着く。

 そこで彼は妙にデカいクモを追い詰めるのだが、突然、「伏せて! 」の声とともに銃声が鳴り響く。
 それは米陸軍、特殊部隊所属の美女・カーリーが放ったものだった。
 しかし、そのクモは10キロはあると思われる下水道のフタを動かし、街へと消えていった。

 今、未曾有のパニックが始まろうとしている・・・・・・。

 (公式ホームページより引用)




 このメガ・スパイダーであるが、結論から言うと非常に手堅い出来の良作だ。

 気障な癖して妙に間の抜けた面の目立つものの、腕は確かな主人公・アレックスと、臆病で軽率だがここぞというときのアシストは万全な相棒・ホセの二人が、成り行きからクモ退治に乗り出す王道一直線のストーリーはテンポが良く、彼等を含めた主要人物のキャラクターはバッチリ立っている。


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(C) 2012 Epic Pictures Group, Inc.

↑主人公の害虫駆除業者、アレックス。
ここは「俺ァ××じゃ○○の名で知られてるんだぜェ」というクールな台詞を今風にした場面である。



 一部展開には少々唐突な部分や、強引に話を進めているような箇所がないわけではなかったが(例を挙げるならアレックスがクモ退治を決意する動機など)、


 この映画は最初から、“行き当たりばったりでいい加減な性格の主人公達が、行き当たりばったりでいい加減な作戦によって未知のクモを退治する”というコミカルなノリの作風であるため、観ていて粗が目に付くというよりは、「まあ、こういうもんだよなあ」という肯定的な感想の方が先に来るような、良い意味でB級映画らしい雰囲気を出せていた。


 そのようなキャラクターの魅力と雰囲気の相乗効果のためか、序盤目に見えて会話で尺を稼いでいる場面こそあったものの、それすら登場人物の軽口は聞いていて楽しく、全体的に見て別段不満を感じる要素がなかったのである。


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(C) 2012 Epic Pictures Group, Inc.

↑公園でクモと格闘中のシーン。
走行マナーの悪いクモはすぐ前方車両を煽ってくるよね。



 また、“時間経過に伴い急速に巨大化していくクモ”という設定を、本作は構成面でしっかりと活かしている。
 設定自体は使い古されたアイデアではあるが、本作では“最初は小型だった”クモが“段階を踏んで超巨大化”していくため、


・序盤では小型のクモが、病院で人々をホラー映画気味に食い殺す
・中盤では大型のクモが、パニック映画の定番である軍隊との戦闘や、主人公達とのカーチェイスを繰り広げる
・終盤では超巨大化したクモが怪獣映画のごとくビルに巣を作る



 などと、きちんとストーリーに設定を反映しつつ、捕食シーンの単調化を避けるための趣向が凝らされているのだ。

 特に序盤の、病院での捕食シーンには気合が入っており、中でも“ベッドの上から動けない老人を襲うクモと心電図の演出”などは「もうこのままホラー映画路線でもいいんじゃないかな」と思わせるほど出来が図抜けていた。

 とのように、劇中花丸パーフェクトな活躍を見せる本作のクモだが、映像的な難点、特にCGに関して言えば(そこは土台予算の都合が多分に出るB級映画であるため)当然チープな部分はある。
 とはいえ、上記の演出と動きの良さにより、


 多少質感が安っぽかろうが迫力は十分に出ていた


 ので、「うっかりハリウッドの新作映画か何かと間違えてこの映画を鑑賞してしまったぜ!」という場合でもなければ別に問題はないだろう。


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(C) 2012 Epic Pictures Group, Inc.

↑冒頭に現れる超巨大化したクモ。
CGがチープと書いたが、瞬間的には出来の良い場面も多い。



 無論クモの出番もきっちりと確保されており、「サメ映画なのにサメが姿を見せないよ」メソッドとは無縁の作品であるため、少なくとも観ていて退屈することはない作品だ。


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(C) 2012 Epic Pictures Group, Inc.

↑中盤におけるクモとのカーチェイス。
B級映画の女神って奴がどこかにいるとしたら……そいつを感動させるだけの何かが今日のレビュー対象にあったってことだろう。



 強いて言えば、もう少し内容に意外性があれば更に良かっただろう。
 B級映画、そしてパニック映画として、様々な面で高い水準を誇る本作ではあるが、特別“本作独自の長所”があったかというとそうでもなく、内容は最初から最後まで王道一直線のパニック映画なのだ。
 そのため、「決して駄目と言うほどじゃないけど、どこかで観たような展開がひたすら続くなあ」、「もう少し、せめて一瞬でも、こう、他の映画にはないような刺激が欲しかったかなあ」と思わないわけではなかった。

 最後に一点だけ短所を挙げたが、“独自性だけ突き抜けておいて他は全部赤点”のような作品が跋扈するパニック映画界において、これは贅沢な指摘と言えるかもしれない。
 だが本作は総合的に、“及第点を余裕で超えるような出来を見せてくれた”からこそ、後一歩物足りなく感じる部分が出てきたのも事実だ。



 とはいえ、「傑作! 大作!」とは言えないものの、この映画が良く纏まった内容の良作であることに変わりはない。

 例えば特に目当の作品もなく、ぶらりとレンタルショップに向かった際、「あー、何か後一本マイナー寄りで出来の良い単純娯楽作品でも観ておきたいなー」と思ったときなどには、このメガ・スパイダーを借りておいて損はしないだろう。



 まあ得をするのかといえばそこは個人の嗜好にもよるけど、絶対に悪い作品じゃないよ! この映画!


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コメント

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No title

貴方様のレビューを見て、メガ・スパイダーに興味が湧くと同時に、【スパイダーパニック】という映画を思い出しました。ご存知でしょうか?そちらは、こちらとは違って色んな種類の蜘蛛が巨大化して色んな方法で人間を襲う…といった作品だったのですが、可能であれば貴方様のご意見を聞いてみたいです。

知的風ハットさんにとってのサメと同じくらい蜘蛛が好きな者です!
 知的風ハットさんならご存知かも知れませんが、アルバトロスさんの、「キングスパイダー」と、公式で誰も望んでいなかった続編と呼ばれる「キングスパイダーvsメカデストラクター」は、酷いもんですがネタとしてオススメです!

サメ台風

この記事とは関係がなくなってしまうのですが、先日近所の本屋の海外小説ゾーンで本の品定めをしていると「シャークネード サメ台風」という小説がありました。2013年の映画なのに2015年12月に出版されてました。どうしましょうか・・・

No title

メガ・スパイダー私も新作レンタルで見ました!
普通に面白いけれどどこか物足りなく、強烈なインパクトがない所は私も残念に思いました。(B級映画基準で)普通に面白いだけに勿体ない!
火に弱い設定が活かされてたのは覚えています。

他の方からのコメントにもありますが「スパイダー・パニック」は普通を通り越してかなり面白いです。ただ「スパイダー・パニック2012」はお察しです……

タイトルに西暦が入ってる作品が糞である確率がけっこう高いのは気のせいだろうか……

No title

↑よく見つけたね。そんな法則

No title

↑×2
じゃあかの有名なハルマゲドンシリーズは生贄ですか!?

No title

↑本当に申し訳ない

No title

面白かったけども序盤のテンポであれ、これクソ映画?とか感じましたけど中盤から良くなってきて、終盤でバトル系な感じにきれいにしまってましたね、続編は...できるなら欲しいですが...あいつでやると見れなさそうですね...あれだよ、「あれ」