【サメ映画】『ブルーサヴェージ』レビュー

『ブルーサヴェージ』

原題:HAI-ALARM AUF MALLORCA/SHARK ATTACK: TERROR IN THE MEDITERRANEAN/SHARK ATTACK IN THE MEDITERRANEAN
監督: ヨルゴ・パパヴァッシリュー
出演: シャノン・ルシオ, ライリー・スミス, ジャスティン・バルドーニ, ビアンカ・リシャンスキー, ジュヌヴィエーヴ・ハワード
備考:別題で『ブルーサヴェージ 巨大ザメ来襲』


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⒞RTL Telelvision 2004

 世界には様々なサメ映画が存在する。

 陸を泳ぐサメ、空を飛ぶサメ、機械のサメ、幽霊のサメ、悪魔のサメ、人体寄生サメ、サメ人間と、『多様性の尊重』という言葉を悪用するかのように明後日の方向へと種類を増やし続けたサメ映画は、最早両手の指でも数え切れない程の個性的な作品群を抱え込んでいる。

 だが一方で、“サメが海を泳ぐサメ映画”もまた、信じられないことに実在しているのだ。

 そこで今回では、今では何か逆に新鮮に感じる“サメが海を泳ぐサメ映画”の内の一本、『ブルーサヴェージ』のレビューを行っていこう。




 あらすじ

 スペインのマヨルカ島で、ヘリコプターの送迎屋を営む中年男性、スヴェン。
 過去にサメの被害を受けて、最愛の妻を亡くした彼は、一人娘のマーヤと共に質素な生活を送っていた。

 辛い記憶を引き摺る余り、マーヤにも半ば愛想を尽かされていたスヴェン。
 だが、偶然仕事で知り合った生物学者の女性、ベネットとの交流を契機に、彼は再び活気を取り戻していく。

 それと同じ頃、マヨルカ島の浜辺では、地元の住人が正体不明の生物に殺害される事件が発生した。
 死体の傍で発見された品は、一枚の巨大なサメの歯。
 それは、過去にスヴェンの妻を殺したサメが現場に残していった歯と、同じ特徴を持った歯。
 そして、“太古の昔に絶滅した”数十メートルの体長を誇るサメの一種――『カルカロドン・メガロドン』の歯だった。

 スヴェンは一人娘を守るために、そして最愛の妻の仇を討つために、ベネットと協力してメガロドンと戦う決意を固める。

 だが、サメの実在を疑う地元警察や、騒動の背後で暗躍する謎の組織、そして想像以上に強大なメガロドンの巨体が、彼等に襲い掛かる――








●作品紹介

 この『ブルーサヴェージ』は、2004年にドイツで製作されたサメ映画である。
 日本では、アルバトロス株式会社から2006年に発売・販売されている。

 余談だが、本作が公開された00年代初頭には、“大昔に絶滅した巨大なサメ”を題材に使ったメガロドン物の作品が、何本も続けて公開している時期があった。
 例を挙げるなら、『シャーク・ハンター(2002)』や、『ディープライジング・コンクエスト(2002)』に、『メガロドン(2002)』(厄年かな)。

 偶然にも題材が被ったのか、流行を意図して取り入れたのか、それは分からないが――このブルーサヴェージも上記の作品群と同様に、メガロドン物の作品である。



 なお、日本では他に『ブルーサヴェージ セカンドインパクト(2005)』という、何か本作に似た邦題を勝手に付けられた作品がまた別に存在するが、このブルーサヴェージとは一切関係がないので気を付けよう。
 『ブルーサヴェージ セカンドインパクト』の原題は『SPRING BREAK SHARK ATTACK』――それも製作がアメリカである。



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⒞RTL Telelvision 2004



●製作会社

 本作の製作は『アクション・コンセプト社(Action Concept Film)』

 自社作品内で頻繁に車を転倒させたり、車を多重衝突させたり、車を爆破炎上させていることで有名な、ドイツで最も四輪駆動に対する嗜虐的な性癖を抱えた製作会社の内の一社である。
※というか公式HPを開くといきなり車が大破している画像が出てくる。

 『アクション・コンセプト社』という名前を知らなくても、『“『アウトバーン・コップ』もしくは『アラーム・フォー・コブラ11』の製作会社”と言えば伝わるだろうか。

 勿論伝わらなくても問題ない。大事なことは、「故に本作にも、派手なカーアクションが盛り込まれている」という事実である。例えこのブルーサヴェージがサメ映画でも。

 ちなみに、アクション・コンセプト社の代表取締役であるヘルマン・ヨハ(Hermann Joha)は、過去に自身が「スタントマン・ヘリコプター操縦士として働いていた」という経歴を持っているとのことだ。
 そこを知っておくと、自社作品の傾向や後述する本作の内容にも色々と納得が行くかもしれない。



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⒞RTL Telelvision 2004

↑後述する本作の内容。
スピード無制限のアウトバーン! そこには、いつも地獄が待ち構えている!




●レビュー

 このブルーサヴェージだが、正直に言うと“序盤の内は”印象の薄い、平凡なサメ映画である。
 とはいえ、それは「出来が悪い」というニュアンスともまた異なる。



 本作の序盤では、「田舎の観光地にサメが出現するが、地元の住民は誰も信じない――」といった正統派サメ映画路線の展開に、『妻を失った男の悲哀』に、『年頃の一人娘との関係』『島を訪れた女性との恋』といったヒューマンドラマやロマンスを絡めて、比較的丁寧に物語が進められていく。

それは別段内容が悪いものではないが、同時に突出した長所を感じたわけでもないので、似たような作品を何本も観ている人間の感想として、「少し退屈」と思ってしまったのも事実である。


 加えて、本作の前半には「肝心要のメガロドンの出番が非常に少ない」という、サメ映画には特有の欠点も見受けられる。


 序盤からメガロドンは出てくるとはいえ、画面には鰭の先端や影、あるいは口が一瞬しか映らない。
 『ジョーズ』のように演出で恐怖心と存在感を煽る工夫もない。

 単に「サメの一部が少し姿を見せたかと思えば、数秒で不完全燃焼気味に消えていく」、微妙な出番が何度も続く。

 そのため、本作を初めて鑑賞した当初は、「まあ、良くも悪くも凡庸なサメ映画の一本」と捉えて、無感情に視聴を続けていたが――





 本編が始まってから約一時間が過ぎた時点で、事態は急変する。



 サメ映画の定番の脚本に沿って、本編中頃で地道にサメに関する調査を進めていた主人公。



 そこに『正体不明の大型トラック』が唐突に登場、自家用車を運転していた主人公へと“何の予兆もなく”奇襲攻撃を行ったかと思えば、前半で見せ続けた正統派サメ映画路線の雰囲気を無視して、“何の脈絡もなく”衝撃のカーチェイスが繰り広げられるのだ。



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⒞RTL Telelvision 2004



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⒞RTL Telelvision 2004



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⒞RTL Telelvision 2004



 そして“何の告知もなく”中盤から急激に作品の方向性を変えてきた本作は、そこから一気に物語のアクセルを踏む。



 大型トラックとのカーチェイスの次には、舞台を移して『海洋生物学研究所で警備員との肉弾戦が勃発』、更に今度は『主人公を追う警官隊とのカーチェイス』が始まったかと思えば、これまた唐突に『本筋と無関係の女性ボーカルが、突然浜辺のステージで歌い始めるパート』が挟まって、そのまま『主人公の搭乗するヘリコプターと、メガロドンの最終決戦』と、もうどうやって説明すればいいのか、何の作品を観ているのか分からない怒涛の展開が押し寄せてくるのである。



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⒞RTL Telelvision 2004

↑本作中盤のカーチェイス。
本作には『激突!』や、『ミニミニ大作戦』のオマージュと思しき展開も多い。




 しかしこのブルーサヴェージ、後半の展開は無茶苦茶な反面、間に挟まるスタントやカメラワークが良い上に、中盤以降から作品のテンポが抜群に改善されてくる。

 また、最終盤でついに姿を現して主人公と対決する、メガロドンの迫力も凄まじい。

 質感が多少チープとはいえ、そこを見せ方・動かし方で補っているメガロドンの巨体は、圧倒的な重量感を伴って、画面上で盛大に暴れ回る。

 特に『海を裂いて超高速で迫ってくるシーン』や、『海面に飛び出して水上オートバイへと襲い掛かるシーン』では、前半の出番不足を纏めて解消するかのように、素直に完璧で期待以上の活躍を見せつけてくれているのだ。



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⒞RTL Telelvision 2004



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⒞RTL Telelvision 2004

↑当然『ジョーズ』のオマージュと思しき狙撃シーンも完備。
吹替では「くたばれ化け物」まで言い切る。




 よって本作、前半と後半で別作品のように雰囲気が分断されているものの、「楽しめるか、楽しめないか」で言えば非常に「楽しめる」、そして「後半から訳の分からない方向へと加速度的に盛り上がる」、従来のサメ映画とはまた違った奇妙な魅力を持つ作品なのである。



●結論

 というわけでこのブルーサヴェージ、やれ「サメの出番が少ない」とか、やれ「脚本が支離滅裂」とか、逐一欠点を並べ立てていけば際限がない駄作に聞こえる作品ではある。

 しかし実際の本編を通して鑑賞すると、理屈では語ることの難しい見所の絨毯爆撃が、細かな短所を超える物量でガンガン飛んでくる愉快な良作でもある。



 『パニック映画』としては不満が残るが、『パニック要素を含んだアクション映画』としては十分な出来、“例えサメの出番が少なくとも”サメ映画に必要不可欠な『面白味(多義語)』は保証されている作品であるので、ぜひともこのブルーサヴェージ、皆様にも一度じっくりと鑑賞して頂きたい。



 それでもちゃんとサメが観たかったという場合は、海に行くのがいい。

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コメント

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サメ出すより、奥さん亡くした元警部の探偵がヒロインとの出会いを通して自分を襲った過去の陰謀を察する……みたいなテンプレートサスペンスでも良かったんじゃないですかね。

No title

上のレビューで挙げたようにサメそれ自体の出番は少なく、アクションシーンに見所が偏っている作品ではあるのですが、一応本筋としてはサメの存在なくして成り立たない作品ですよ。

所謂尺稼ぎパートが明後日の方向に面白いサメ映画だろうか
考えてみれば会話や言い争いで尺を埋めなくてはならない決まりは無いし
この会社だから出来る発想の勝利なのかもしれない
歌手を呼ぶのも本編に大して関わりの無い脇役なら客寄せにしても鬱陶しくならないし

No title

単なる尺稼ぎと言うには相当力が入っているので、多分やりたいことや自社の得意分野をとにかく全部詰め込んだ結果なのではないかとは想像しておりますが、その辺の受け取り方には個人差が出るかと思われますので、実際の本編をご覧頂ければ幸いです。

No title

途中何度か出てくるハーレム持ちの富豪さんがいい人過ぎてモテモテに納得した記憶
バカンス楽しんでると毎回主人公が降ってくるから諦めただけかもしれないけど・・・
悪役側にも一応の動機あったり主人公の親友も奥さん助けたい一心だったりと憎めない部分もあり
陸での諸々が色々楽しめたサメ映画の佳作だったと思います

No title

脇のキャラクターもなかなか魅力的でそこは観ていて楽しかったですね。

No title

知的風ハット氏は『ファイナル・プロジェクト』はご覧になりましたか。ジャッキー・チェンのサメ映画です。